PFNとENEOSが「Matlantis」の汎用NN力場を機能強化

計算対象を72元素へ拡張、化学反応や原子構造を高精度に再現

 2022.09.17−Preferred Networks(PFN)とENEOSは16日、汎用原子レベルシミュレーター「Matlantis」のコア技術であるPFP(Preferred Potential)を機能強化し、最新版であるv3.0を提供開始したと発表した。深層学習によって構築されたいわゆる汎用ニューラルネットワーク(NN)力場で、計算可能な元素をこれまでの55から72元素に拡張。地球上に存在する物質の99.99%以上をカバーできるという。密度汎関数法(DFT)と同等の精度で力場計算ができることから、幅広い領域の材料探索を大幅に高速化できると期待されている。

 PFNとENEOSは、昨年7月に合弁で「Preferred Computational Chemistry」(PFCC)を設立し、クラウドでPFPによる計算サービスを実施する「Matlantis」を提供中。今年9月1日時点で41の企業・研究団体に活用され、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)のための戦略的ツールとして、触媒、電池材料、半導体、合金、潤滑油、セラミック材料、化学材料などの開発に役立てられている。

 今回のPFP最新版v3.0では、とくに排ガス浄化用触媒や水素吸蔵合金などに使用されるレアアース(プラセオジム、ネオジム、サマリウム)、次世代太陽電池での活用が期待されるハロゲン元素(臭素、ヨウ素)などに新規に対応した。これにより、温室効果ガスの削減やクリーンエネルギー分野での開発に「Matlantis」が大きな役割を果たすと期待しているという。また、計算対象が広がっただけでなく、材料特性を左右する物質の原子構造、密度や結合状態といった性質をより正確に予測できるようになったとしている。

 基本的には、社内スーパーコンピューターで多くのDFT計算を実行し、その計算結果を深層学習に利用して、汎用NN力場を構築しており、今回のv3.0開発にはGPU21台換算で1,144年分の計算資源を使用、データセットの総数はv1.0開発時の2.2倍に当たる2,200万に達した。それに加え、ENEOSの化学に関するドメイン知識を融合することで、計算精度の向上や対象領域の拡大が図られたという。

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<関連リンク>:

Preferred Networks(トップページ)
https://www.preferred.jp/ja/

Preferred Computational Chemistry(Matlantisトップページ)
https://matlantis.com/ja/

Preferred Computational Chemistry(設立1周年記念サイト)
https://matlantis.com/wp-content/static/ja/1st_anniversary/


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