CCS特集2022年冬:パトコア

創薬研究のDX化を支援、電子実験ノートを新開発へ

 2022.12.01−CABC'S(カブクス)グループのパトコアは、ハンガリーのケムアクソン社との協業をメインにCCS関連事業を展開しており、ケムアクソン製品を輸入販売するほか、化学物質の法規制チェックシステムなど自社開発パッケージをケムアクソン経由で海外市場にも提供している。創薬研究のデジタルトランスフォーメーション(DX)、化学特許作成などの知財DX、法規制や安全性などの化学物質管理DXを3本柱として実戦的なソリューションを提供している。

 ケムアクソン製品は、データベース(DB)で化学構造式を扱うための標準的なケミストリーエンジンをはじめ、ケムインフォマティクス分野のツールやアプリケーションを幅広く揃えている。なかでも、提案活動を強化しているのが化合物デザインプラットフォーム「DesignHub」。べーリンガーインゲルハイムとの共同開発をベースに製品化したシステムで、創薬研究現場で必要とされる機能がしっかりと盛り込まれている。デザイン中の分子に関する各種計算結果、DB検索結果などをリアルタイムで表示し、データ駆動型創薬研究をサポートすることが可能。プロジェクト関係者が関連するすべての情報にアクセスできるプラットフォームであり、CRO(医薬品開発受託機関)などの外部に委託した情報もまとめて管理可能。チームとしてのコラボレーションを促進するように作り込まれている。たまったデータを機械学習でモデル化するなど、人工知能(AI)利用を想定した使い方も考慮されている。

 10月に久しぶりの日本ユーザー会がリアルで開催されたが、その場で電子実験ノートの開発が発表され、DesignHubと連携するデモンストレーションも披露された。来年に製品化される予定で、化学用、生物用など、製薬業向けの電子ノート機能が順次リリースされる。電子ノートとしては最後発の製品になるが、ケムアクソンが満を持して放つ電子ノートとしてユーザー会では大きな注目を集めたという。DesignHubはケムアクソンで最も成長している製品で、国内でもいくつかのユーザーで評価が進んでいる。その意味で、このタイミングでの電子ノートとの統合はインパクトが大きい。

 また、印エクセルラと新たに代理店契約を結び、世界最大のマニュアルキュレーションされたSAR(構造活性相関)DB「GOSTAR」の販売を開始した。文献や特許から人手で集めたデータで、899万化合物と8万件以上のターゲットに関する情報が登録されている。トータルのSARデータ件数は約3,000万件に達する。近年、AI創薬が注目されているが、公共DB内の薬物動態情報は実験条件が統一されていなかったり、化合物の記述が不正確だったりする場合が多く、高精度の機械学習モデルとしての利用に適しているとはいえなかった。これに対し、GOSTAR内の情報を訓練データセットに用いることで、薬物動態パラメーターを予測する機械学習モデルの精度を向上させることが可能だとして、注目を集めている。エクセルラ社では、顧客の要望に合わせてマニュアルキュレーションしたDB構築サービスも請け負っているということだ。


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