CCS特集2023年夏:化学情報協会

生命化学向け新機能搭載、特許請求項の従属関係を把握

 化学情報協会は、科学技術分野の検索ツールとして、米国化学会(ACS)の情報部門であるケミカルアブストラクツサービス(CAS)との長年のパートナーシップのもと、一般の科学者にも使いやすい「CAS Scifinder-n」、特許調査などの専門家の高度な要求に応える「CAS STNext」を国内の利用者に提供している。CASは世界最大の化学物質データベースを持っているため“化学”のイメージが強いが、近年は“ライフサイエンス”に力を入れる戦略を明確にしており、関連する機能の開発・提供をハイペースで実施してきている。

 具体的には、昨年末からSciFinder-nで生物活性情報の提供が開始された。構造活性相関(SAR)、体内動態(ADME)、毒性に関するデータが新たに登録されており、目的とするターゲットやリガンド、疾患を指定して検索すると、そのデータを含む物質情報または文献情報がヒットする。現時点では、440万件以上の物質レコード、20万件以上の文献レコードにSARデータが収録されているという。今後、STNextでもこのデータを参照できるようになるほか、パスウェイやバイオマーカーなど新なたカテゴリーのデータも追加され、予測機能なども実装されていく。

 また、SciFinder-nの最近の機能強化では、人工知能(AI)で先行技術調査を支援する機能の評価が高い。注目した特許の詳細表示画面で「Get Prior Art Analysis」ボタンを押すだけで、その特許の出願年以前の関連する技術文献を自動的に探索してくれる。200件ほどのリストがスコア付きで表示されるため、調査漏れの心配がなくなるという。さらに、自由なキーワードで検索したあと、「Get Similar References」ボタンで類似文献を自動的に集めてくれる機能も便利だ。そのキーワードではヒットしない文献も含め、類似性の高い情報が集まるため、思わぬ気づきが得られることも多いという。

 CASでは、ライフサイエンス関連機能を推進するに当たり、世界的なレベルの有識者らからなる「ライフサイエンス・アドバイザリーボード」を組織しており、専門的な立場からのフィードバックを得て、創薬研究段階におけるよりよい意思決定を支援するコンテンツや機能の開発を進めている。スペインのケモターゲッツ社が蓄積していた既存医薬品の薬理情報と安全性情報を網羅的に収録した「CLARITY」の権利も取得している。

 一方、STNextにおいてもユニークな新機能が搭載された。1つは、特許請求項の複雑な従属関係をツリー形式で表示する「Interactive Claim Viewer」機能。普段特許を読み慣れていない人間でも、請求項の関係を一目で把握できる。欧州特許のEPFULLと、世界知的所有権機構(WIPO)に国際出願されたPCTFULLファイルでこの機能が利用できる。また、物質検索時に、その物質が特許の請求項に記載されているかどうかをすぐに判別できる「Claimタグ」が利用できるようになっている。米国特許と中国特許に続き、WO特許のPCT出願にも対応しており、将来的には日本特許でもこの機能が利用できるようになる予定だという。


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