CCS特集2023年夏:三井情報

MIソフト試作版を強化、要望入れ説明変数を多次元化

 2023.06.28−三井情報(MKI)は、東京大学大学院理学系研究科の一杉太郎教授らとベイズ最適化を利用したマテリアルズ・インフォマティクス(MI)向けアプリケーションの共同研究を実施。昨年3月に試作版をインターネットで無償公開し、材料研究者からのフィードバックを募ってきた。そして、要望を取り入れて、今年4月に機能のアップデートを実施した。現時点では、研究活動の一環として開発しているものだが、今年は事業化に向けた検討を具体的に進めていくとしている。

 開発自体は3年目に入っており、今回のアップデートで実用性も高まっている。アプリケーションの試作版は三井情報のウェブサイト(https://mki-bayesopt-v2.mkilabs.io/mitools)から利用でき、簡単なアンケートに答えるだけで実際に試すことができる。説明変数の取り得る範囲を設定し、手持ちの実験データを数件入力、実行ボタンをクリックすると次に実験をするべき説明変数の値が提示される。提案に従って実際に実験したあと、その結果を目的変数としてあらためて入力し、このサイクルを繰り返すことで最適解に近づけていく。このベイズ最適化は、実験データのみから実験条件を最適化する技法で、MIで広く利用されている。

 最初の試作版は説明変数が2個(2次元)までだったが、今回その上限を撤廃し、多次元対応にアップデートした。それにともない、説明変数が多い場合でもベイズ最適化のプロセスをモニタリングできるよう、可視化機能を大幅に強化し、グラフの新規追加や改善を図っている。試作版公開以降に寄せられた意見を反映させたもので、今後も引き続き機能の追加や使い勝手の改善などを進めていく。実際、これまで接点のなかった多くの企業から大きな反響があり、有益な情報交換ができる関係をつくることもできたという。

 同社では、一杉研究室の自動・自律的実験システムに今回のMIアプリケーションをつなげ、研究サイクルを自動化して回す実証実験に取り組む考え。どれくらいの効果が出るか、どのような可能性があるかなどを検証し、事業化に向けたイメージを固めたいとしている。とくに、MIのプラットフォーム化を見据えると、さまざまなハード・ソフトとの連携が重要になってくる。その点で、各方面とフラットに協業できるMKIのポジションには優位性があると考えられる。MIに挑戦したいが足がかりがないという中堅どころの材料メーカーや地方の企業からの反響が大きいということで、事業化に向けた動きが期待されよう。


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