CTCLSが創薬研究向け電子実験ノートブックを発売

シミックスがシンセマティクスを統合、最適な合成経路を視覚的に検討

 2005.09.15−CTCラボラトリーシステムズ(CTCLS)は、製薬業向けの新しい電子実験ノートブックソリューション「Arthurスイート」(オーサースイート)を発売した。米シミックステクノロジーズが今年3月に米シンセマティクスを買収して得た製品で、過去のノウハウを一元化・共有して創薬研究者が合成実験を行う際に最適な合成経路を検討したり、開発現場との間のデータ連携を円滑にしたりすることに役立つ。ライセンス価格は1ユーザー60万円で、2006年度に1億5,000万円の売り上げを見込んでいる。

 CTCLSは、シミックスが昨年11月に買収した「iELN」も今年の7月から販売しているが、こちらはパイロット段階からスケールアップを目指したプロセス研究に焦点を当てた電子実験ノートソリューションで、今回のArthurスイートとはやや性格が異なる。

 Arthurスイートは、医薬品研究開発の上流に位置する探索研究分野を対象とし、研究者が計画した合成経路とその実験に関する情報を、サーバー上で電子化して一元管理する。業務効率の向上とともに、知的財産や機密情報の保護にも最適なソリューションとなっている。研究者の自由な発想や創造性を刺激することを主なターゲットにして開発された。

 その最大の特徴は、最適な合成経路を割り出す“リアクションプランナー”機能。化合物情報6万件、反応情報2万件を収録した独自データベースを内蔵しており、目的の化合物を得るための出発物質や中間体、その反応条件や収率などを知ることができる。合成経路のツリー構造が視覚的に示されるため、研究者はどのような経路で反応させるとステップ数が少ないか、収率が最も高いかなどを簡単に調べることが可能。利用者が実際に実験した結果をフィードバックして蓄積することもでき、社内の化学合成のノウハウを共有して最大限に活用することができる。

 また、Javaをベースに開発されているため、幅広いサーバーおよびクライアントの環境をサポートしており、他のアプリケーションとの連携や統合も容易。例えば、合成のプランニングを行ったあとに、それに必要な試薬を発注したり在庫を確認したりといったアプリケーション連携のニーズに対しても、CTCLS側でインテグレーションサービスを提供していく。

 基本的には電子実験ノートソリューションであるため、高品位なドキュメント(実験報告書・手順書・計画書など)作成機能を備えているほか、米食品医薬品局(FDA)が定めた電子記録・電子署名に関する基準である21CFRパート11、パート58などにも完全準拠している。

 シミックス社は、昨年11月にインテリケムを、今年3月にシンセマティクスを買収し、幅広い電子実験ノートのソリューションラインを築き上げた。シミックスのソフトウエア事業部門は現時点で約200人の陣容に拡大しているという。今年1月には日本事務所(東京都新宿区西新宿1-26-2、新宿野村ビル32階、代表者・新谷智夫氏)を開設して技術サポートに力を入れてきている。今後ともCTCLSとの密接な連携のもとに事業を拡大させていく考えである。