ビル・ゲイツ氏がシュレーディンガーに出資

カスケードインベストメントを通し1,000万ドル、技術開発さらに加速

 2010.05.15−シュレーディンガーは4月27日、マイクロソフトの元会長であるビル・ゲイツ氏の個人所有の投資会社であるカスケードインベストメント社から1,000万ドルの出資を受けたと発表した。ゲイツ氏は、シュレーディンガーのサイエンティフィックアドバイザリーボードの議長を務めるフリスナー教授(コロンビア大学)と親交があり、同社の技術力や将来性を高く評価して投資を決めたという。すでに、世界最大級の米国ヘッジファンドを運営するD.E.ショウ氏からも1995年以来段階的に資金を得ているが、著明な大富豪2人から投資されたCCSベンダーはいまのところ同社だけ。「多くのベンダーの中から当社に投資してもらえたことは光栄であり、技術力の高さの証明だと思っている」(劉士儀マーケティング担当副社長)としている。

 ゲイツ氏のカスケード社は幅広い領域に投資しているが、最近ではゲイツ氏自身がとくにヘルスケア分野に興味を示しているとされる。“健康”は人類共通の関心であるが、もとはソフトウエアエンジニアのゲイツ氏としてはソフトウエア技術で新薬開発を促進するコンピューターケミストリーシステム(CCS)にあらためて注目したようだ。

 CCS分野では、1990年代初頭に欧米の投資家から注目を浴びた時期があったが、1990年代後半には大きな期待が失望に変わって市場も一時的に縮小したという経緯がある。ゲイツ氏もそのあたりは承知の上で、当時はコンピューターの処理能力が不足していたことが大きな要因で、テクノロジーの進歩によりCCSは再び発展するとの見方を示しているという。投資も今回だけではなく、成果が出れば追加投資も積極的に検討したいとコメントしている。

 シュレーディンガーは、1990年設立で20周年を迎えた独立系ベンダー。非経験的分子軌道法ソフトウエア開発をはじめ、ドッキングシミュレーションなどの創薬支援ソリューションで幅広い製品ラインアップを誇っている。社員数は140人、年商は非公開だが2,000万ドル以上の売り上げがあるとみられている。

 今回の投資は、ゲイツ氏にとっては少額のものだが、シュレーディンガーにとっては大きい。同社では、新しい科学や計算理論をますますソフトウエアに取り入れていくために、この資金を活用する方針だ。今後、新製品開発などがさらに活性化すると期待される。


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