米レッドハット:クレンショウ副社長(クラウド事業担当)会見
オープン性がクラウドの真価引き出す、すでに大半のデータセンターが採用
2010.04.15−米国レッドハットのクラウド事業担当副社長であるスコット・クレンショウ氏が来日し、14日に記者会見を行った。同事業部は今年から新設されたもので、プラットホーム(Linux)、ミドルウエア(JBoss)に次ぐ、同社の第3の柱となる。仮想化技術の導入にはじまり、プライベートクラウドの構築、パブリッククラウドとの統合へといたるあらゆるステージでのニーズに柔軟に対応する先進的技術を提供していく。とくにクレンショウ副社長は、すでにクラウドデータセンターの大半がレッドハットの技術を導入していることや、オープンソースでクラウド化を進める同社の優位性を強調した。
会見の要旨は以下の通り。
「クラウド化はもはや確実な流れであり、ビジネスの面でも勢いがある。このことは、昨年の米国IT産業で大きく成長したのが当社とセールスフォース・ドットコムの2社だけだったことからも明らかだ。レッドハットはエンタープライズLinux市場で、革新性・信頼性・高性能を武器に成長を達成したが、同じ戦略をクラウド市場にも適用したい。そのために専門の事業部を設立した」
「クラウドの特徴は、顧客のビジネスプロセスに対して、ITの俊敏性や柔軟性を提供できることだ。それには、さまざまなプラットホームやツールを相互に組み合わせる必要があり、オープン性がカギになる。ところが、ヴイエムウェアやマイクロソフトなどの他ベンダーは囲い込み戦略を行おうとしている。レッドハットは“デルタクラウド”と呼ぶオープンインターフェース開発を推進しており、他社の仮想化環境の上でレッドハットの技術を利用したり、他社の管理ツールからレッドハットの技術を含むクラウドシステム全体を管理したりすることも可能になる。基本的にオープンシステムは顧客に対して戦略面での自由さを与えることができ、それがLinuxが成功した大きな要因となっている。クラウドでもこの基本は崩さない」
「クラウド導入の道のりは、まず社内のITインフラ(サーバー)を仮想化するところからはじまる。そうすると、管理の複雑さに悩むようになり、プロセスを自動化したいという要望が出てくる。これがプライベートクラウドの導入につながる。仮想リソースの複数インスタンスを抽象化し、スケーラブルでセルフプロビジョニングが可能なコンピューティングプールをつくり出すからだ。そして、プライベートクラウドを運用しはじめると、パブリッククラウド上のキャパシティを利用してみたくなる」
「プライベートクラウドとパブリッククラウドの統合が最終的なクラウドの姿だ。“デルタクラウド”に対応したデータセンターであれば、いままで社内で運用していたアプリケーションをそのままパブリック上へ展開することができる。社内の管理ツールでパブリックを含めた全体を統合管理することも容易。オープンだからこうしたことが可能になる。リソースがユーティリティ化されることにより、日ごとにあるいは時間単位でも、常に最適なかたちで柔軟にサービスを受けることができるようになる」
「そのために推進しているのが“レッドハット認定クラウドプロバイダー”制度だ。現在、IBMとアマゾンドットコムを認定しているほか、30社ほどのデータセンターを審査中。かなり厳しい基準で認定するので、顧客には安心して利用してもらえる」
「IBMといえば仮想化の生みの親であり、たくさんの選択肢の中からレッドハットが選ばれた意義は大きいと思う。また、映画制作会社のドリームワークスは、世界でも最大規模のプライベートクラウドをレッドハットの技術で構築している。米国防総省のプロジェクトも受注した。最高レベルの信頼性とセキュリティが要求されたが、これもレッドハットが選ばれた。われわれのクラウドの実績はすでに豊富だ」