CTCラボラトリーシステムズ:根岸秀樹社長インタビュー
製薬業支援専門で20周年、5ヵ年計画で新たな成長戦略
2010.07.01−CTCラボラトリーシステムズ(CTCLS)は、ライフサイエンス分野の研究開発を支援するユニークな専門IT(情報技術)ベンダーとして設立20周年を迎えた。海外の優れたパッケージソフトをベースに、探索研究から臨床試験、市販後の安全性情報の管理に至るまでの幅広い領域をカバーするソリューションを揃えている。根岸秀樹社長は、「人間でいえばちょうど成人。伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)グループの一員として、次のステップを目指した成長戦略を描いていく。コアコンピタンスをしっかりと固め、一般のITベンダーにはできない独特の強みをこれからも発揮していきたい」と話す。
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− 20年の間にはさまざまな出来事があったと思いますが、主だった事柄をいくつか挙げていただけますか。
「もともとは旧伊藤忠データシステムのラボラトリーオートメーションシステム部が前身で、旧MDL(現シミックス)や旧ポリジェン(現アクセルリス)などのパッケージで事業を立ち上げながら、いろいろと製品群を増やしてきた。オラクルやドキュメンタムというと、いまではメジャーなベンダーだが、親会社のCTCよりも先にCTCLSが代理店の権利を取得していたことを話すと、多くの人に驚かれる。当初は、われわれがオラクルの国内トップディーラーだった」
「逆に、大打撃となったのが、2003年にMDLが直販に切り替わって販売権を失ったことだ。当時の売り上げの3分の1を占めていた事業で、いろいろな意味であれが転機になった。他の商材が育ってきていたし、事業領域も広げつつあったので、うまく乗り越えることができた。一時期は、ハードウエアを扱って売り上げ拡大を志向するなどの試みもあったが、いまは利益を重視する経営へと転換しており、ソフト・サービスに集中して着実に発展させている」
− 現在ではシミックスとのパートナーシップも復活していますね。ほかにも転機がありましたか?
「1999年12月に親会社のCTCが上場して、われわれが連結子会社に組み込まれたことだ。それまでCTCLSは独立独歩でやってきており、自由奔放な社風だった。当初はうまくなじめないところもあったようだ。それで、20年を経て大人の会社に脱皮しよう、と社内向けには強調した。実際には3年ほど前からCTCのやり方に合わせるようにしてきている。自由な社風・ベンチャー精神を残しつつ、CTCグループとしての組織力を身につけることが狙いだ。ISO9000シリーズの認証取得にも取り組んでいる」
− そうした歩みを踏まえたうえで、これからの将来ビジョンをどのように考えているのですか。
「現在、2009年度を起点とする5ヵ年の中期経営計画を推進中だ。最初の3年はこれまでの延長線上での基盤づくり、あとの2年で新たな事業分野への挑戦を果たしていく」
− 最初の3ヵ年での狙いは?
「とくに注目しているのがトランスレーショナルリサーチの分野だ。当社は、創薬研究のインフォマティクスプラットホームと、開発支援ソリューションの両方を幅広く手がけており、研究と臨床の間を橋渡しするトータルサポートで有利なポジションにいる。この点では、グローバルサポートが重要であり、日米欧の三極をカバーできる体制固めを急ぎたい。CTC本体のグローバル戦略と足並みをそろえるとともに、海外においては伊藤忠商事のネットワークの強みも生かせると思っている」
「また、LIMS(研究所統合情報システム)分野が立ち上がってきているため、これのさらなる発展を狙う。具体的には、STARLIMS(米スターリムス社)が昨年、警察庁のDNA型鑑定支援システムに採用された。全国の科学捜査研究所など48ヵ所に設置され、大量データを一元的に管理する。STARLIMSは化学・食品など製薬業界以外からも引き合いが強く、当社としても積極的に販売体制を強化していく考えだ。とくに、品質保証や品質管理の用途を中心に、いままであまり縁のなかった顧客の製造関係の部署にも足がかりを築きたい。それと同時に、製造系に向けた新たな商品の導入も計画している」
− それらが“新たな挑戦”になるわけですか。
「いや、これらは現在の延長線上での新しい展開であり、中期計画の後期で想定しているのはまったくの新規事業の発掘だ。そのため、今年から事業戦略部を創設した。もちろん、同じような組織は以前からあったが、今回は専任部隊で、企画・リサーチをいちからやっていく」
− 意気込みが違うということですね。
「その通りだ。ただ、CTCLSのコアコンピタンスからかけ離れたことはしない。ライフサイエンス企業のニーズや市場動向をいちから探りなおし、新たな事業をみつけ出したい。当社には薬剤師や臨床検査技師など、普通のITベンダーにはいないユニークな社員が揃っている。これを財産として、他社にできないことをやっていきたい」
− 長時間、ありがとうございました。