ヒューリンクスが英クレセットの薬物分子設計ツール
新手法で生物学的等価体を探索、高精度ファーマコフォア作成も
2010.12.15−ヒューリンクスは、英国の創薬支援ソフトベンダー、クレセット社(本社・ハートフォードシャー、ロブ・スコフィンCEO)と代理店契約を結び、新薬分子設計を行う際に生物学的等価体を探索するパッケージソフトを年明けから販売開始する。海外の大手製薬会社で実績があり、高精度に候補化合物を絞り込むことができるため、ムダな実験を減らす効果があるという。WindowsおよびLinuxで動作し、価格は年間ライセンスで29万円から。初年度800万円、3年度に3,000万円の売り上げを見込んでいる。
クレセット製品は、「fieldalign」(フィールドアライン)、「fieldstere」(フィールドステア)、「fieldscreen」(フィールドスクリーン)、「fieldtemplater」(フィールドテンプレーター)の4種類のパッケージで構成される。生物学的等価体を用いた構造修飾やリード最適化、ファーマコフォア生成、バーチャルスクリーニングを行うことによって、薬物分子設計を効率的に行うことが可能。
とくに、“モレキュラーフィールドテクノロジー”という独特の手法を採用していることが最大の特徴。一般的には、分子の形状や静電ポテンシャルに注目して生物学的等価体を探索し、構造を置換することで、より活性の高い新規な化合物を設計するが、同社の技術では静電ポテンシャルや撥水性、形状を総合した分子を取り囲む場としてその特性を表現する。分子の周囲に展開させたフィールドポイントの類似度によって生物学的等価体を探索する仕組み。
これまでのソフトは、形状や静電ポテンシャルだけに着目しているため、探索結果に不正な分子が混ざってしまいムダな実験が生じることも多かったが、クレセット製品ではより精度の高い結果が得られるという。
個々の製品についてだが、まず「fieldalign」は化合物の活性を理解し最適化するためのツールで、3次元構造活性相関機能を統合している。フィールドをベースにして化合物の3次元重ね合わせを行うことが可能。
「fieldstere」は、母核構造に対して共通の生物活性を有する等価なリード分子を探索するソフト。構造的多様性を持つ生物学的等価体を正確に特定することが可能で、特許や毒性などの問題がないかを確認しながら骨格を丸ごと変更できるパワフルな能力を備えている。
「fieldscreen」は、数百万のドラッグライク化合物からなるフィールドファーマコフォアデータベースを利用してバーチャルスクリーニングを実行する。ヒット化合物や既知の薬物構造から新規リード化合物を発見するだけでなく、ペプチドから非ペプチド、ステロイドから非ステロイドへのリード置換にも優れている。
「fieldtemplater」は、フィールドベースでファーマコフォアを生成するツール。標的たん白質の構造情報が未知の場合でも、その活性リガンドの構造をいくつか利用することで、フィールドの高度な類似性を示す集合を見つけ出すことができる。Gたん白質共役型受容体(GPCR)やイオンチャンネル、新規標的などを用いる創薬に威力を発揮する。
ソフトウエア価格は、年間ライセンスでfieldalignとfieldtemplaterが1ユーザー29万円から、fieldstereは同146万円から。これらは基本的にスタンドアロンでの使用になる。fieldscreenはアカデミック224万円、スモールビジネス448万円となっている。それぞれ、一括のサイトライセンスやグローバルライセンスも用意されている。
ヒューリンクスは、CCS分野では米ケンブリッジソフトと米ガウシアンの製品をメインとしているが、今回のクレセット製品はそれらに次ぐ柱となることを期待して、販売に力を入れていきたいとしている。