日本オラクルが医療情報連携基盤ソリューションを積極展開

海外での実績・事例をてこに、パートナー連携も強化

 2010.10.27−日本オラクルは26日、医療情報連携基盤(EHR)市場に本格的に参入すると発表した。営業と技術部門に専任部隊を編成し、オラクルグループの海外のチームと連携を取りながら具体的なソリューションの日本化を推進、国内の医療分野に強いベンダーやコンサルティングファームなどのパートナーと連携して戦略強化を図る。市場が本格化するとみられる2013年から2015年に向けて、医療関連分野向けの売り上げを倍々で伸ばしていくことにしている。

 今回、米オラクル本社が4月に臨床試験支援システムの大手であるフェーズフォワード社を買収するなど、創薬・医療分野を最重点業種と位置づけていることに加え、日本政府が5月に「どこでもMY病院」、「シームレスな地域医療連携の実現」などの構想を打ち出したことを受け、日本オラクルとしてもこの市場に本腰を入れることにしたもの。

 オラクルグループ全体では、ライフサイエンス(医薬分野)とヘルスケアに(医療分野)分けてソリューションを拡充しているが、日本ではとくに政府が推進する「医療情報連携基盤」に焦点を当てたビジネスに力を入れる。

 これは、国や地域レベルで医療情報のネットワーク化と情報共有・活用を推進する考え方で、各医療機関がばらばらに保有している臨床データや患者データを統合・正規化するとともに、一元化された情報へのユニバーサルなアクセス、プライバシー情報の厳格な管理とセキュリティ、医療情報交換のためのデータ形式の標準化−などのIT面での取り組みが含まれている。

 同社では、これまでも電子カルテやオーダリングなどの病院向けシステム、先進的な医療機関向けの院内情報統合システムなどを手掛けてきているが、データベースやミドルウエアなどのツールの提供がメインだった。今回は、豊富な海外での事例を踏まえつつ、アプリケーションに踏み込んだソリューションまでを自前で提供できるようにしていく。同時に、自社でカバーできない分野では、外部ベンダーとの連携をこれまで以上に強化していく方針。

 記者会見で説明した米オラクルのヘルスサイエンス・グローバルビジネスユニット上級副社長のニール・デ・クレセンゾ氏(Neil de Crescenzo)は、「現在、より優れた医療を実現するためのコラボレーションが重要になっており、それは企業や政府機関だけでなく、市民、医療提供者、患者にまで広がっている。また、医療コストの管理は価値に基づく医療(evidence-based medicine)を前提とする傾向が強まっているため、IT側もはっきりとした導入効果を示す必要があるだろう。いずれにしても、優れた医療が目指す方向や目標は万国共通であり、オラクルのワールドワイドの実績や事例は日本の顧客にも大いに参考になると思う」と述べた。

 とくに、合併したサンのヘルスケア研究所を吸収するかたちで設立された「オラクル・ヘルスサイエンス研究所」(OHSI)が、戦略的にも大きな意味を持っているという。世界の学術研究機関と共同での研究を行っており、その重要テーマとしては、人工知能とセマンティックテクノロジー、ゲノム・遺伝および表現型データの分析、臨床試験の最適化を支援するデータマイニング、有害事象の早期検出を可能にする予測的アルゴリズム、治療段階における高度な意思決定支援−などがあげられる。


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