英IDBS:クリス・モロイ副社長インタビュー、電子ノートが急成長

機能材料・化粧品向けにも拡大、複雑で大量の研究データを管理

 2011.04.08−英IDビジネスソリューションズ(IDBS)は、複雑で大量の研究データを管理・分析・モデル化するためのエンタープライズクラスのソリューションを提供。医療、医薬、化粧品、化学、農薬、ファインケミカルなど幅広い産業をターゲットとし、急成長してきている。クリス・モロイ(Chris Molloy)企業戦略&アジア太平洋担当副社長は、「日本市場に進出して10年以上になるが、創薬研究におけるハイスループットスクリーニング(HTS)分野のソフトベンダーだという古いイメージが根強いように思う。今後は日本でも積極的に事業領域を広げるため、日本法人設立も視野に入れ、パートナー戦略を強化したい」と話す。

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 − 貴社の概略を紹介してください。

 「英国のギルフォードに本社を置く企業で、1989年に設立された。社員数は250人。複雑な研究データを大量に集め、病院や研究開発分野の科学者にデータ分析の環境を提供したり、外部機関との国際的なコラボレーション環境を整えたりするための基盤となるソフトウエアを提供している」

 − 2010年は際立った成長を記録したようですね。

 「売り上げが27%伸び、4,620万ドルに達した。内訳は、ソフトウエアのライセンス収入が82%増の1,670万ドル、サービス収入が10%増の1,180万ドル、保守が8%増の1,770万ドルだ。研究開発のための研究データプラットホームである『E-WorkBook』、生物評価試験研究者向け電子実験ノートブック『BioBook』、化学研究者向け電子実験ノートブック『ChemBook』の成長が著しい」

 − 地域別の売り上げはどうですか。

 「50%が米国だ。アジア太平洋はまだ小さいが、伸び率は200%と高い。メルボルン、上海、東京に事務所があるが、インドやシンガポールも伸びている」

 − 電子ノートが伸びたということですが、現在の市場の様子を教えてください。

 「電子ノートのベンダーは欧米に30〜40社ほどあるが、近年は当社が急成長し、業界2位で20%ほどのシェアを獲得している」

 − 製薬会社の合成部門への導入はほぼ一巡した印象ですが。

 「確かにその市場は飽和しつつある。一旦、導入されるとリプレースは難しいので、今後伸びる余地は小さいと思う。そこで、いま注目しているのは臨床研究の分野だ。とくに、パーソナライズド医療、トランスレーショナル医療と呼ばれる分野で、遺伝子情報やバイオマーカー情報、治療履歴など扱うデータが複雑・多様だし、病気の種類や人種でもデータが変わってくる。創薬における合成実験ための電子ノートは、ある意味で紙を代替したものにすぎないが、臨床の場合は海外の機関での実施など、外部とのコラボレーションの要素が重要になってくるので、紙では対応できない事柄が関係してくる。つまり、電子ノートである必要性が格段に高くなる」

 「さらに、研究情報が企業にとって重要な資産だという考え方がいろいろな業界に広がり、当社の『E-WorkBook』『BioBook』『ChemBook』は機能材料やハイテク素材、化粧品などの研究開発にも採用されてきている」

 − かなり市場が広がっていますね。対日戦略はいかがですか。

 「代理店であるCTCラボラトリーシステムズ経由で日本に進出して10年以上になるが、当時のHTSデータ管理ベンダーだというイメージがまだ残っていると思う。昨年、業界経験豊富な日本人社員を採用したので、これからは弊社の強みをアピールして積極的に販売拡大を目指したい。製薬業向けでは、創薬の領域から開発のステージへとソリューションを広げる。日本の製薬業もグローバル戦略を強化しているので、ワールドワイドでサポートができる当社の強みをもっと訴えたい。また、化学・材料や化粧品など医薬以外の業種にも浸透を図る」

 − 日本法人を設立する考えもありますか。

 「有能なスタッフを多数揃えるCTCラボラトリーシステムズとの良好な関係を強化した上で、日本法人を設立し、対日戦略を強化したい。日本でのスタッフ拡充、幅広い業種に対応するためのパートナー拡大など、まずは成長への体制固めを進めていく。日本はなによりも品質を重視する市場であり、日本で鍛えられることで世界に通用する製品になれると思っている。日本市場から学ぶことは多いと感じている」

 − 長時間ありがとうございました。


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