ジーンデータ:オスマン・ファネスCEOインタビュー

生物情報サーバーソリューションで成長、大手顧客と強固な関係

 2011.08.02−1990年代終盤から2000年代前半に市場を席巻したバイオインフォマティクスブームが過ぎ去って久しい。当時登場したベンダーの多くはすでに消えているが、スイスに本社を置くジーンデータ社は生き残り、最近の5年間は年平均20%という高い成長を成し遂げている。新薬の研究開発において、ターゲットやリード、バイオマーカーなどの探索のためのソリューションで実績を伸ばす同社のオスマン・ファネス(Othmar Pfannes)CEOに事業の近況や今後の対日戦略について聞いた。

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 ジーンデータは、ノバルティス出身者らが中心になって1997年に設立された。本社はスイスのバーゼルで、米国のボストンとサンフランシスコ、ドイツのミュンヘンとコンスタンツ、そして東京にオフィスがあり、全部で100人以上の社員がいる。

 具体的な製品としては、ハイスループットスクリーニング(HTS)やハイコンテントスクリーニング(HCS)に対応した「Genedata Screener」(スクリーナー)、バイオ情報解析のための統合プラットホーム「Genedata Expressionist」(エクスプレッショニスト)、プロテオミクスやメタボロミクスなどの大量データを利用した統計解析に対応できる「Genedata Analyst」(アナリスト)、次世代シーケンサーなどの多種多様な実験データやアノテーションデータを一元管理する「Genedata Selector」(セレクター)、生物データを登録するための「Genedata Biologics」(バイオロジクス)−がある。

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 − 御社の強みは何ですか。

 「業界の大手企業から支持されていること、それら顧客との密接な協力関係を構築していることだ。製薬業のトップ25社のうちの20社以上、農薬のトップ5社のうちの4社、バイオ企業のトップ2社がわれわれの顧客であり、最近ではバイオ燃料関係の企業も導入が進んできている」

 − やはり、エンタープライズクラスのサーバーソリューションであるということが、そうした支持につながっているようですね。

 「生物関連のデータはますます増大している。とくに、次世代シーケンサーではデータが大量で、アノテーションも膨大になる。人手で扱うのは不可能なサイズであり、機器に付属のソフトはスタンドアロン型なので、しっかりとしたサーバーソリューションが求められている」

 − ところで、今回は7月に開催された日本トキシコロジー学会学術年会に合わせての来日(ランチセミナーのスポンサー)ですが、どんなお話をされたのですか。

 「毒性バイオマーカー探索のためのソリューションとして、エクスプレッショニストを中心に事例を紹介した。次世代シーケンサーの活用を含め、ゲノミクス、プロテオミクス、メタボロミクスなどのオーミクス方面からこのテーマにアプローチすることが、最近の医薬研究開発分野でホットな話題になっているからだ。新薬申請時にFDAやEMEAなどの当局に提出できるデータであり、承認までの期間が早くなるといわれている。また、再承認の際にもトキシコロジーデータは有効だ。ただ、そのためには規制に対応できるしっかりとしたデータプラットホームが必要。当社の製品は市場で唯一のサーバーソリューションとして浸透が期待できると思う」

 − 次に日本市場についてですが、現状を教えてください。

 「日本でも、製薬業のトップ10社のうちの7社と取り引きがある。この関係をさらに強固にするとともに、ユーザー層を広げる取り組みをしていく。その意味で、戦略製品の1つがセレクターで、製薬業以外の顧客が増えてきている。食品・飲料、バイオ燃料、バイオマテリアルなど、他業種でもバイオデータを活用した研究開発が盛んになってきているからだ。これは、日本市場でも大いにチャンスがあると考えている」

 − 中国市場はどうでしょうか。どのようにみておられますか。

 「欧米のあとを日本が追っているのが製薬産業のおおまかな構図だ。中国はそれに10年遅れていると思う。アカデミックレベルでは新薬開発への取り組みもあると聞くが、われわれの製品はエンタープライズソリューションであるため、少なくとも今後数年といったレンジで目立った市場が発生するとは考えていない」

 − なるほど、わかりました。では、最後に日本での事業目標を聞かせてください。

 「欧米では大手製薬企業と強固な関係を築いており、研究開発の効率化や改善に大きく貢献してきたとの自負がある。こうした成功事例を日本に還元し、日本の顧客にも大きな利益を与えたい。そのため、現在の日本法人は6人体制だが、質の高い人材の養成も含めて増員を図っていく。目標としては、日本市場が全体の売り上げの20%を占めるまでに拡大させたい。そのころには人員も15人くらいになっていると思う。いずれにせよ、日本市場にはじっくりと長期的に取り組んでいく考えだ」


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