2011冬CCS特集:化学情報協会
結晶データを多面的に活用、高度な解析機能を提供
2011.12.07−化学情報協会(JAICI)は、英ケンブリッジ結晶学データセンター(CCDC)の「CSD」を活用した“ソリッドフォームインフォマティクス”の有用性を広く訴える。
CSDは、X線や中性子線回折で解析した有機分子の結晶構造データベース(DB)で、約57万件の情報を収録したもの。またCCDCは、PDBに収録されているたん白質やそれに結合したリガンド分子の結晶構造を自由に検索する「Relibase+」も提供している。これらのファクトDBの情報をモデリング/シミュレーション技術などと組み合わせるだけでなく、リスクマネジメントにも活用できるというのが今回の“ソリッドフォームインフォマティクス”の考え方。
研究の初期段階でターゲットたん白質に結合しやすいリガンド分子を探索する際、ファクトデータから実際の複合体構造を考察することによってモデリングの指針を得ることが可能。さらに、医薬品開発の最終段階でもファクトDBは欠かせない。候補化合物の結晶構造が決まっても、その後に結晶多形が問題になるケースも多い。得られている結晶が安定相なのか、それとも多形の1つなのかをファクトから分析することができる。
CSDには収録されている結晶データを活用する解析モジュールがいくつか用意されており、分子のねじれ角の分布、さらには水素結合のような分子間相互作用のモチーフ(結合様式)のパターンを解析し、安定構造に関する知識に基づいた的確な判断に結びつけることができる。ファクトに裏付けされた系や解釈であれば、より真実に近いと判断できるというわけだ。
CCDCは、粉末X線回折データから結晶構造を決定する「DASH」、たん白質とリガンドとのドッキングシミュレーションを行う「GOLD」といったCCSパッケージソフトも開発しているが、これらもCSDのファクトデータを利用していることが特徴。処理速度や解析精度に定評がある。
化学情報協会では、他社CCS製品を利用しているユーザーにもCSDの積極的な活用を促していくことにしている。