エルゼビアが医薬品ターゲット探索向け新サービス

5,000誌の学術論文を全文検索、マトリクス状の検索で意外な発見も

 2012.02.11−オランダに本社を置く学術出版および情報サービス大手のエルゼビアは9日、医薬品の標的探索と検証の過程を効率化し、戦略的で上質な意思決定を可能にする新サービス「TargetInsights」(ターゲットインサイト)を提供開始したと発表した。5,000誌以上の生物医学分野の学術誌に掲載された文献をフルテキストで検索することにより、網羅的で漏れのない調査が可能。豊富で正確な情報に基づき、適切な標的を選択することができる。利用料金は年間ライセンス方式で、研究者の数などに応じ機関単位での包括契約となる。

 同社によると、医薬品開発の失敗の多くは不適切な標的の選択に起因しており、不十分または不正確な情報によって不必要な実験や低質な意思決定を繰り返すリスクが高まっているという。標的探索は文献調査が入り口になるが、PubMedなどのパブリックなサービスでは検索対象が論文の要旨やタイトル、キーワードに限定されている。逆に、新発見の兆候は本文内の考察欄などで論じられることが多い。このため、製薬会社の間ではさらに幅を広げて検索したいという要望が高まっていた。

 今回の「ターゲットインサイト」では、エルゼビア以外から発行されている学術誌も含めて5,000誌を網羅。フルテキストの対応は2010年9月以降のデータだけ(それ以前は要旨のみ)になるが、現時点で80万件以上の論文が全文検索の対象である。実際に同じキーワードで検索すると、PubMedよりも3〜5倍多いヒットが得られるという。

 多くのヒットから重要な情報を絞り込むための機能も充実しており、全データを約900万の統制語からなるタキソノミー(体系化された用語・同義語集)を用いてインデックス化している。具体的に、遺伝子・たん白質・RNA、化学物質と薬剤、疾患、生物機能、器官、組織、細胞構成要素、細胞株−の9つのタキソノミーで分類できるので、たくさんの情報でも体系的に理解しやすい。興味のある分野の文献だけを抽出するのも容易。また、複数のキーワードが共に出現(共起)する範囲を“文書・段落・文”の中から指定して検索することも可能だ。

 さらに、大きな特徴として“マルチプルサーチ機能”(写真参照)を搭載した。これは、スプレッドシートのイメージで行と列に複数のキーワード群を配置し、すべての掛け合わせで一括して検索を実行するもの。セル内にはヒット件数が表示され、セルをクリックすると実際にヒットリストが示される。通常の検索は、利用者があらかじめ関連性を想定した用語の組み合わせで行われるが、マルチプルサーチではキーワードの組み合わせをマトリクス状に網羅するため、利用者が想定していなかった意外な発見につながるケースもあると期待される。

 同社では、生物医学分野のこれほど幅広い最新の文献を全文検索できるサービスはほかには存在しないとしており、米欧日の大手製薬会社に向けて積極的に売り込みを図っていく。

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<関連リンク>:

エルゼビア・ジャパン(ホームページ)
http://japan.elsevier.com/

蘭エルゼビア(ターゲットインサイトの製品紹介サイト)
http://www.targetinsights.com/info/


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