米リアクション・デザインがPM規制対応シミュレーション技術

燃焼で発生する煤の粒径と粒子数を予測、クリーンエンジン開発を支援

 2012.03.10−米リアクション・デザインは、自動車エンジンの燃焼時に発生する煤(すす)の粒子径や粒子数を予測するシミュレーション技術を確立した。日米欧の自動車やエンジンメーカー約20社が参加し、2期6年にわたって実施した「モデル燃料コンソーシアム」(MFC)の開発成果としてソフトウエアを製品化したもの。今後、排ガス中に含まれる煤などの粒子状物質(PM)の規制が欧米で一段と強化されることを背景に、今回のソフトはよりクリーンな燃焼を実現するエンジン開発のための重要な要素技術として広く注目されそうだ。

 自動車の排出ガス規制は段階的に強化されているが、欧州連合(EU)や米国ではPMに関する規制が注目されており、EUでは昨年10月に“EURO5”規制が拡張されてPM排出量(質量)に加えて粒子数も対象となった。排ガスからのPMの除去は、フィルターや触媒などの後処理で行うことができるが、大きなコストアップ要因となるため、クリーンな燃焼によってPM発生の元を断つアプローチが望ましいと考えられているという。

 同社では、MFCを通して実際の燃焼を精密に予測するための燃料モデルを開発。ガソリンやディーゼル、ジェット燃料を構成する50種類あまりのコンポーネントライブラリーを構築した。さらに、芳香族分子が化学反応で生成され、それらが集まって煤となり、さらに表面成長、凝集、酸化などを通してPM粒子が大きくなっていく過程をシミュレーションするメカニズムを実装することに成功した。実験と比較して、実際に高い予測精度が確認されているという。

 同社では、まず煤生成モデルと解析機能を素反応ベースの化学反応シミュレーションソフト「CHEMKIN-PRO」に“パーティクルトラッキング機能”として組み込んだ。これにより、エンジン内で発生するPMの粒径と粒子数を予測することができる。

 ただ、実際にシミュレーションを実行するためには、MFCが開発した燃料コンポーネントライブラリーや特別な化学反応メカニズムが必要。これは、MFCメンバーの利益のために一定期間非公開となっているため、外部ユーザーがすぐに利用したいと思ったら、MFCに加入する必要があるようだ。

 同社ではさらに、自社の3次元流体解析ソフト「FORTE」に煤モデリング機能を統合し、今年後半にはリリースする予定。エンジン内部での燃料の燃焼と煤の発生状況をダイナミックに解析できるので、より実用的なツールとしてクリーンエンジン開発に役立つことになる。レーザー計測での実証実験の結果ともよく合っている。

 また、今回のシミュレーション技術は、自動車排ガスの環境分野だけでなく、ファインカーボン製品の開発などにも応用できる可能性があるとして、幅広い用途展開を探っていく考えだ。

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<関連リンク>:

米リアクション・デザイン(ホームページ)
http://www.reactiondesign.com/lobby/open/index.html

米リアクション・デザイン(CHEMKIN-PRO 製品紹介ページ)
http://www.reactiondesign.com/products/open/chemkin-pro.html

米リアクション・デザイン(FORTE 製品紹介ページ)
http://www.reactiondesign.com/products/open/forte.html

米リアクション・デザイン(モデル燃料コンソーシアム 紹介ページ)
http://www.reactiondesign.com/support/open/mfcII.html


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