インフォコムが豪デザート社の新創薬支援ツール

たん白質/リガンド複合体の相互作用解析、ネットワーク協調効果をスコア付け

 2012.04.20−インフォコムは18日、豪デザートサイエンティフィックソフトウエア社(ニール・テイラー社長)と国内独占販売代理店契約を結び、薬物分子設計に役立つたん白質/リガンド複合体解析ソリューションを発売したと発表した。大手製薬会社と共同開発した新規性の高い手法を導入しており、より結合性の高いリガンド構造を設計することができる。Linuxをサーバーとして利用し、ウェブクライアントで動作するので、一般の研究者にも使いやすい。

 デザートサイエンティフィック社は2000年に設立された企業で、ロシュやノバルティス、メルク、ジョンソン&ジョンソンなどのメガファーマ向けにコンサルティングを提供することを主業務としてきた。近年に徐々にソフト開発業務が増え、現在ではたん白質とリガンドの複合体を解析するための統合されたソリューションを整えてきている。インフォコムとしては、とくにロシュと共同開発した新製品である「Scorpion」の新規性が高いことに注目し、今回デザート製品を本格的に日本市場に導入することを決めたという。

 さて、デザート製品の全体像は別図に示した通りである。たん白質およびリガンドとの複合体の立体構造情報を格納するリレーショナルデータベースシステム「Proasis3」、たん白質とリガンド分子との相互作用解析を行う「ViewContacts」、ネットワークモデルの考え方に基づき複合体の安定構造を解析する「Scorpion」−が主要な製品。

 なかでも、国内の製薬企業に対しては、「Scorpion」と「ViewContacts」を組み合わせたソリューションで売り込む考え。「ViewContacts」は複合体の非共有結合性相互作用を解釈する最新の機能を持っている。具体的には、結合部位におけるさまざまなタイプの水素結合、極性相互作用、親油性接触を包括的に探索。たん白質に結合している水分子の置換ポテンシャルを評価し、結合水の置換されやすさの指標を得ることができる。これはリガンド構造を修飾するための重要な情報になる。技術的には、相互作用を評価するために他のソフトでは取り扱わないようなパラメーターまでを算出していることが特徴になるという。

 一方の「Scorpion」は、「ViewContacts」の計算結果をもとにネットワークモデルに基づくスコア関数を生成し、そのスコアをベースにしてより安定的な複合体構造を調べることができる。実際のたん白質とリガンドとの相互作用は、リガンド分子のある置換基が最も強く相互作用しているアミノ酸残基との1対1の単純な関係ではなく、そのアミノ酸残基が別のアミノ酸残基とも相互作用していたり、同じアミノ酸残基がリガンドの別の置換基とも相互作用していたり、複数のアミノ酸残基が同じ置換基と相互作用していたりする場合が多いといわれる。

 複合体のそうしたネットワークの協調効果を定量的に見積もるのが「Scorpion」の機能であり、最もユニークな点。デザート社のベンチマークでも、通常の手法では予測値が実験値と大きく異なる場合でも、ネットワーク効果を考慮すると実験値をより正確に再現できることがわかっているということだ。

 逆に結合を妨げるパラメーターもスコアリングすることができるため、リガンド設計のための多くのヒントを得ることができる。海外のメガファーマですでに実績があることからも、国内の製薬企業にも注目されると期待される。

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<関連リンク>:

インフォコム(CCS関連ページ)
http://infocom-science.jp/

インフォコム(デザートサイエンティフィック製品情報ページ)
http://infocom-science.jp/product/detail/desertscientificsoftware.html

豪デザートサイエンティフィック(トップページ)
http://www.desertsci.com/index.htm


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