化学情報協会が「SciFinder」を医薬研究分野で浸透へ

生物活性情報の追加など新機能搭載、物性値での検索も

 2012.07.24−化学情報協会(JAICI)が国内で提供している米ケミカルアブストラクツサービス(CAS)のオンライン検索サービス「SciFinder」が機能強化され、その新機能のいくつかが医薬品開発分野で注目されている。とくに、生物活性関連情報がデータベースに収録されたことや、LD50などの物性で物質検索ができるようになったことなどが高い評価を受けている。

 SciFinderは世界最大級の物質系データベースで、物質情報と化学反応情報、文献情報、法規制情報などが関連づけられており、化学物質の合成ルートの探索、物質関連情報の調査・確認、最新の論文・特許情報の追跡などに利用される。

 化学物質を対象とする幅広い研究領域にユーザーが広がっているが、最近では医薬の研究開発をターゲットにした機能強化も目立っている。

 とくに、最近の機能強化のなかでは生物活性情報を収録したことが注目される。具体的には、化学物質の詳細情報として新たに“バイオアクティビティインジケーター”と“ターゲットインジケーター”の2つが追加された。前者は、その物質がどのような生物活性を持つ可能性が高いのかを示したもので、抗生物質、血管収縮剤、抗がん剤、中枢神経系薬、アルツハイマー病治療薬など、実際の用途分野が示される。また後者の方では、その物質がどのようなターゲット(受容体や酵素)に作用する可能性が高いのかを把握することができる。

 どちらのインジケーターでも、詳細表示画面上で該当する項目をクリックすることにより、その情報のソースとなっている文献情報を簡単に取得することが可能。さらに、構造検索や解析機能と組み合わせると、特定の構造上の特徴とそれに対応する生物活性やターゲットの傾向を分析したり、事前に知らなかった生物活性やターゲットを発見したりするなどのメリットがあるという。

 一方、最新のバージョンアップで追加されたのが物性値による物質検索機能で、これも医薬研究で有用性が高い。この機能は、13種類の実測物性値と21種類の予想物性値を指定して全物質を検索することができる。実測物性値は、沸点、密度、電気伝導度、電気導電率、電気抵抗、電気抵抗率、ガラス転移温度、磁気モーメント、50%致死量(LD50)、融点、旋光性、屈折率、引張強度。予想物性値はあらかじめ計算で予測した値が登録されており、水素結合アクセプターの数、水素結合ドナーの数、分子量、オクタノール/水分配係数(LogP)、回転可能な結合数、生物濃縮係数、沸点、密度、蒸発エンタルピー、引火点、水素結合ドナーとアクセプターの合計数、有機炭素の吸着係数、pHを考慮したオクタノール/水分配係数(LogD)、固有質量溶解度、質量溶解度、固有モル溶解度、水へのモル溶解度、モル体積、酸塩基解離定数(pKa)、極性表面積、蒸気圧−となっている。

 実際の使い方は、物性検索画面に入って、実測か予想かのどちらかを選択して、調べたい物性の種類をプルダウン項目から選ぶ。そして、物性の値(大きい、小さい、範囲などの指定が可能)を入力するだけ。現時点では、2種類の物性を組み合わせて検索することはできないが、最初の物性で検索したあと、次の物性で絞り込むことは可能。

 とくに、予想物性値は医薬関係でよく使う種類が揃っており、ドラッグライクな化合物として望ましい物性を備えた物質を簡単に抽出することができる。

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<関連リンク>:

化学情報協会(トップページ)
http://www.jaici.or.jp/

化学情報協会(SciFinder 紹介ページ)
http://www.jaici.or.jp/sci/SCIFINDER/index.html


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