米CASと独FIZの「STN」が日本特許の全文データベースを搭載
数値データ検索機能を強化、各国特許の横断検索も
2012.11.10−米ケミカルアブストラクツサービス(CAS)と独FIZカールスルーエが共同で運用する科学技術情報データベースサービス「STN」に、日本特許の全文データベースが新規搭載された。特許庁が発行した公開特許、登録特許および実用新案の全文が英語で収録されており、新しい情報が特許発行後約10日間で反映されるなど速報性も高い。STNは最近、特許情報を充実させてきており、現在のところ12種類の特許全文データベースを利用することが可能。とくに、特許全文内の数値データを検索できる機能に対する評価が高い。今回の日本特許は、この数値検索が最新バージョンで対応していることも大きな特徴となる。
STNは約150種類のデータベース(STNではファイルと呼ぶ)にアクセス可能なプロフェッショナル向けのオンライン検索サービス。化学、化学工学、医学、薬学、電気、電子工学などの広範な科学技術分野の文献・特許情報を網羅している。なかでも特許関連は30以上のファイルが揃っているが、全文データベースとしては世界知的所有権機関(WIPO)に国際出願された「PCTFULL」ファイル、ヨーロッパ特許庁(EPO)に出願された「EPFULL」ファイルに加え、各国特許庁からの「USPATFULL」(米)、「USPAT2」(米)、「USPATOLD」(米)、「PATDPAFULL」(独)、「GBFULL」(英)、「FRFULL」(仏)、「CNFULL」(中国)、「CANPATFULL」(カナダ)、「AUPATFULL」(オーストラリア)、そして今回利用可能となった「JPFULL」(日本)の合計12ファイルとなる。
数値検索は1年前から実現されており、この機能の対象となるファイルは「PCTFULL」「CNFULL」「CANPATFULL」「AUPATFULL」「JPFULL」の5つ。このうち、最新の「JPFULL」では、新しいバージョン2の数値検索機能を利用することができる。また、全文系ではなく、抄録・索引データベースの「WPI」ファイル(世界47の特許発行機関からの情報を収録)もバージョン2の数値検索の対象となる。
多くの特許では、その権利範囲を指定するために物理的・化学的物性値が用いられているが、それらの数値は範囲で表現されていることが多く、単位もさまざまで記載方法も多様であることから、通常のキーワード検索では特定の数値データを満たす特許を検索することは難しかった。STNの数値検索はこれを初めて可能としたもの。
バージョン2では、検索可能な物性が30種類から55種類に増えた。具体的には、物質量(デフォルト単位:mol)、ビットレート(bit/s)、保存情報(bit)、静電容量(F)、電流密度(A/m**2)、モル濃度(mol/L)、コンダクタンス(S)、デシベル(db)、角度(degree)、密度・質量濃度(kg/m**3)、線量当量(Sv)、投与量(mg/kg)、動的粘度(Pa*s)、電荷(C)、電荷密度(C/m**2)、電気伝導率(S/m)、電流(A)、電場(V/m)、エネルギー(J)、電気抵抗率(ohm*m)、力(N)、周波数(Hz)、国際単位(IU)、動粘度(m**2/s)、長さ(m)、光度(cd)、照度(lx)、光束(lm)、質量(kg)、質量電荷比(m/z)、磁束密度(T)、質量流量(kg/s)、モル質量・分子量(g/mol)、重量モル濃度(mol/kg)、メルトフローレート(g/10min)、栄養素含量(g/100*kcal)、パーセント(%)、誘電率(F/m)、水素イオン指数(ph)、電力(W)、圧力(Pa)、放射能(Bq)、電気抵抗(Ohm)、回転速度(rpm)、面積(m**2)、溶解度(g/100g)、表面張力・ばね定数(J/m**2)、熱伝導率(W/m*k)、温度(K)、時間(s)、速度(m/s)、角速度(rad/s)、体積流量(m**3/s)、体積(m**3)、電圧(V)。メートル法とヤード法の違いなどの単位は自動変換してくれる。
さらにバージョン2では、単位記号だけでなくアルファベットで書き下ろして表記された単位の数値も検索対象となるほか、「〜以上、〜以下」のように最小値または最大値のみで記載された数値範囲も検索可能となっている。
一方、今回のJPFULLファイルは2006年以降に出願された特許を収録しているが、毎週の更新時に遡及データも含めていく予定。おおよそ週ごとに1年ずつさかのぼり、最終的には1964年まで遡及することになっている。言語が英語であるため、各国特許の複数のファイルを一括検索できるという利点がある。
来年にはさらに、ドイツ(現在のPATDPAFULLはドイツ語のため、新たに英語の全文データベースとして追加)とインドの特許全文ファイルが追加される予定だ。これらも数値検索機能の対象になると思われる。
なお、STNは日本では化学情報協会(JAICI)を通して契約することができる。
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<関連リンク>:
化学情報協会(STN紹介ページ)
http://www.jaici.or.jp/stn/stnint.htm
CCSnews(STN数値検索バージョン1に関する記事)
http://homepage2.nifty.com/ccsnews2/2011/4q/2011_4Qjaicistnnumericsearch.htm