シュレーディンガー日本法人がクラウドサービス普及に本腰

10月に第1号ユーザー獲得、年間300万円で1万CPU時間

 2012.12.20−シュレーディンガー日本法人は、創薬支援のためのモデリングツールをクラウドベースで利用できるようにする「クラウドパッケージ」の普及に本格的に乗り出す。10月には国内での第1号ユーザーを獲得しており、12日に都内で開催した日本ユーザー会でサービス内容を詳細に紹介した。基本料金として、300万円で1年間に1万CPU時間までの利用が可能。一時的に大量の計算を実行したい時や、ライセンスを追加せずに多くのユーザーにシステムを利用させたいなどの目的にかなっているという。

 このクラウドサービスは、今年の春から米サイクルコンピューティングとの協業により提供しているもので、データセンターには Amazon EC2 を利用している。クラスターノードは分散処理型と並列処理型の両タイプが用意され、計算量に応じて動的に追加・削除が可能。また、420GBの共有ストレージが割り当てられる。

 現在、クラウド上で利用可能なアプリケーションは、高速ドッキング計算の「Glide」、インデュースドフィット(誘導適合)を考慮する「IFD」、MM-GBSA法を利用したスコアリングを行う「Prime MM-GBSA」、コンビナトリアルライブラリーからの自動ドッキングを行う「CombiGlide」、バーチャルスクリーニングワークフロー「VSW」、3D-QSARの「Phase」、たん白質立体構造予測の「Prime」、分子動力学法エンジンの「Desmond」、リガンド結合部位における溶媒和水の自由エネルギー計算を行う「WaterMap」、分子設計支援ソフト「MacroModel」、量子化学計算エンジンの「Jaguar」、三次元構造を立ち上げる「LigPrep」、活性配座探索の「ConfGen」−など。基本的に既存ユーザーのための付加的なサービスという位置づけであり、利用したいプログラムのライセンスを所持している必要がある。

 ただ、ハード・ソフトはすでに設定済みであるため、ユーザーは自分専用に用意された計算環境をすぐに利用することが可能。ポータルサイトを通して、ユーザーアカウント管理や利用状況のモニタリングも簡単に行える。実際のアプリケーションの利用は、共通GUIソフトの「Maestro」およびコマンドラインからいつも通りの操作で行うことが可能だ。

 小規模ユーザーにとっては、最小限のライセンスの所有で、システム専門の要員を必要とせずに大規模な計算環境をクラウドから調達できるというメリットがある。一方、中大規模ユーザーにとっては、突発的な計算ニーズが生じた際に社内のリソースやライセンスに制限がある場合、また計算が大量で負荷がかかりすぎる場合などに役立つと考えられる。

 利用料金は、1年間有効の基本プランが1万CPU時間で300万円。契約期間内は5,000CPU時間単位で追加が可能で、契約をさらに1年延長する場合は残ったCPU時間を持ち越すことができる。

 1万CPU時間のボリューム感についてだが、高精度なSPモードでのGlideによるバーチャルスクリーニングで10万個の化合物の処理が400CPU時間、誘導適合ドッキングが1,000化合物で600CPU時間、Phaseによるファーマコフォアスクリーニングで100万化合物が20CPU時間、Desmondによる3万原子のたん白質の3ナノ秒のMDシミュレーションが100CPU時間−といったところが目安になるようだ。

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<関連リンク>:

米シュレーディンガー(トップページ)
http://www.schrodinger.com/

シュレーディンガー(日本法人トップページ)
http://www.schrodinger.com/jp

米サイクルコンピューティング(トップページ)
http://www.cyclecomputing.com/


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