パトコアが法規制物質判定ソフトをバージョンアップ
薬事法の包括指定に対応、クラウド型サービスもスタート
2013.02.20−パトコアは、化学構造から法規制物質を判定する「CRAIS Checker」(CRAISチェッカー)を機能強化し、最新バージョン2.4を20日から発売する。厚生労働省が新しく省令を公布した薬事法の「包括指定」に対応するなど、サポートする法令を増やしたほか、パフォーマンスも大幅に改善している。また最近では、製薬業以外の製造業や輸出入業者などからの引き合いが活発化していることを受け、クラウド型のサービスも正式に提供開始する。
CRAISチェッカーは、化学構造式をベースに各種法規制に対する該当/非該当を迅速にチェックするシステム。製薬企業が電子実験ノート(ELN)と連携させて、コンプライアンス対応の目的で導入するケースが多い。対応している法規制は、麻薬及び向精神薬取締法、覚せい剤取締法、薬事法、毒物及び劇物取締法、労働安全衛生法、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律、化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)、消防法、化学兵器の禁止及び特定物質の規制等に関する法律、輸出貿易管理令、水質汚濁防止法、土壌汚染対策法、悪臭防止法、米国規制物質法(Controlled Substances Act、CSA)。判定漏れのなさ、判定の正確さで評価が高く、国内で30社以上の導入実績がある。
今回の最新バージョン2.4では、新たに公布された薬事法の「包括指定」に対応。これは、脱法ドラッグへの対策として、薬事法の指定薬物に類似した化学構造を持つ物質を一括して規制対象としたもの。これまでのような個別の化合物ではなく、特定の基本骨格とその特定の位置における置換基の結合の組み合わせによって、一連の物質群を指定薬物に加えている。このため、CRAISチェッカーの判定メカニズムでの対応は容易だったという。また、今回の最新版では、化学物質の輸送に関連した法令をさらに広げ、「航空法施行規則・航空機による爆発物等の輸送基準等を定める告示」、「国際連合危険物輸送勧告」(United Nations Recommendations on the Transport of Dangerous Goods)をカバーしている。
さらに、規制によっては適用条件が定められているものがあるため、それを明示する機能を付け加えた。例えば、アジ化ナトリウムは毒物及び劇物取締法の毒物に指定されているが、濃度が0.1%以下の場合は非該当となる。このように条件付きの場合は、画面上にそれが表示されるようになった。
一方、今回から正式に提供開始するクラウド型サービスは、システムのインストールなしでウェブクライアント経由で利用できるため、初期費用が不要で、管理コストも低いというメリットがある。クラウドサービスだけの契約も可能で、主に非製薬業のユーザーの利用を想定しているという。将来的には、API(アプリケーションプログラミングインターフェース)を公開して、ユーザーの社内システムと連携できるようにする計画もある。
そのほか、バージョン2.4の特徴としては、最新の構造検索エンジンを採用してパフォーマンスを向上させたことがあげられる。マルチコアCPUに対応して並行処理を行うことで、最大で数倍の高速化が達成されたという。また、規制化合物に該当する判定が得られた時に管理者などにメールアラートを発する機能や、判定履歴を記録してレポート作成に利用する機能は、これまでELN側へのカスタマイズで対応していたが、今回はそれをCRAISチェッカーの標準機能として取り込んだ。運用面での柔軟性が向上し、ELN自体のバージョンアップも行いやすくなる。
なお、同社では、CRAISチェッカーと同等の仕組みを利用し、化学構造式からHSコード(Harmonized Commodity Description and Coding System(商品の名称および分類についての統一システム)を特定するシステムを開発中。HSコードは、日本では「輸出入統計品目番号」、「関税番号」、「税番」などとも呼ばれ、世界の200以上の国や地域が採用しているコード番号である。化学物質の通関時に関税額を計算するために必要なコードで、調べる作業が面倒だったという。今年の夏に製品化を目指しており、クラウドサービスでも利用できるようにする。海外での需要も見込まれるとの期待もあるようだ。
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<関連リンク>:
パトコア(トップページ)
http://www.patcore.com/
パトコア(CRAISチェッカー製品情報ページ)
http://patcore.com/jp/product/crais_checker/