米CASなどが「STN」新プラットホーム版をベータリリース
操作性・作業性が大幅向上、プロ向け機能充実へ
2013.01.18−米ケミカルアブストラクツサービス(CAS)と独FIZカールスルーエが共同で運用するオンラインサービス「STN」の新プラットホーム版が、昨年12月にリリースされた。一部ユーザー向けのベータ版という位置づけだが、早ければ2013年内にも正式サービスに移行するとみられる。ウェブブラウザーで利用でき、特許専門家向けのプロフェッショナルツールとして検索機能が大幅に強化されるとともに、操作性が格段に向上している。ただし、詳細についてはまだ未公表で、今後が注目される。
STNは、化学、化学工学、医学、薬学、電気、電子工学などの広範な科学技術分野の文献・特許情報を網羅した検索サービスで、日本では化学情報協会(JAICI)がSTNの東京サービスセンターとしての役割を担っている。約150種類のデータベース(STNではファイルと呼ぶ)にアクセスでき、世界の主要な特許庁や研究機関の審査官・知財専門家などのプロフェッショナルの要求に応えることを目的として開発された。複雑な検索コマンドを組み合わせることにより、必要な情報を確実に探し出すことができる。
今回の新プラットホーム版は、クライアントがウェブブラウザーに変わるが、一般向けの使いやすさを狙ったものではなく、あくまでも検索のプロがその生産性をさらに高めること、また古くなったシステムを一新して制限を取り払うとともに新たな機能を盛り込むことを主眼にしているという。
そのため、ユーザーが修得しているコマンドをそのまま使用することが可能。これまでは検索式や検索結果、検索履歴がテキストベースで画面表示されていたため、見たい部分を探すためにスクロールを繰り返す必要があったが、新プラットホーム版はウェブ画面によって情報の閲覧性が大幅に向上している。また、化合物データベースで物質検索をしたあと、その物質に関する情報を載せている特許や文献をあらためて検索し直すなど、検索対象のファイルをその都度切り替える必要があったが、今回は物質検索と特許・文献検索がパラレルに行われるようになっており、異なるファイルからの情報を便利に調べることが可能である。
基本的にプロジェクト単位で作業をまとめることができるため、将来的には特定のテーマに沿った検索結果をチーム内で共有したり、検索担当者が知財部門にレポート配信したりするなどのワークフローに役立つとも期待される。さらに、ヒット件数の制限などのシステム上の制約が取り払われたことも、パワーユーザーにとっては重要なポイント。レスポンスも劇的に向上しており、タイムアウトがなくいつでも作業を再開できることも歓迎されているようだ。
新プラットホーム版は、現在はまだベータ版の位置づけであり、定額契約ユーザーの一部に開放されている。使用できるファイルも、「CAS REGISTRY」(化学物質情報)、「Chemical Abstracts」(文献情報)、「Derwent World Patents Index」(特許情報)など一部のファイルに限定されている。今後、ユーザーのフィードバックを得ながら、順次機能の拡張を進めていく予定。新しい料金体系などの詳細も、これから具体的に検討されていくと考えられる。
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<関連リンク>:
米CAS(STN製品情報ページ)
http://www.cas.org/products/stn/
独FIZカールスルーエ(STN製品情報ページ)
http://www.stn-international.de
化学情報協会(STN製品情報ページ)
http://www.jaici.or.jp/stn/stnint.htm