シュレーディンガーが材料科学系モデリング市場に進出
実績豊富な基盤技術を共通化、まず触媒設計などターゲット
2013.06.28−シュレーディンガーは、材料科学系の分子モデリング市場に進出し、「MATERIALS SCIENCE SUITE」(マテリアルズサイエンススイート)を製品化した。同社は創薬向け分子モデリング技術で実績豊富なベンダーで、その基盤技術を材料科学向けにも共通化したもの。まずは、触媒設計などに適用できる機能が実装されているが、順次機能拡張が図られる予定であり、今後の方向性が注目される。
同社は、創薬向けのSBDD(ストラクチャーベースドラッグデザイン)/LBDD(リガンドベースドラッグデザイン)分野のモデリングソフト、ケムインフォマティクスツールを幅広く開発。米国のCCS業界では、元マイクロソフト会長であるビル・ゲイツ氏からの出資を受けている企業としても知られている。
今回のマテリアルズサイエンススイートは、創薬向けに展開してきた豊富な製品群を、いわば材料科学用途に転用したもの。具体的には、ケムインフォマティクス解析ツール「Canvas」、コンビナトリアルライブラリー自動ドッキングプログラム「CombiGlide」、分子動力学計算エンジン「Desmond」、量子化学計算エンジン「Jaguar」、ワークフロー構築ツール「KNIME Extensions」、分子力学解析ソフト「MacroModel」、材料科学向けに拡張されたGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)ソフト「Maestro」−から構成されている。
全体として、高分子などの材料構造をモデル化することができ、気相および液相での高精度な第一原理計算が可能。計算結果を利用した予測機能としては、反応熱化学と反応経路探索、遷移状態理論からの反応・輸送速度定数、酸化・還元ポテンシャル計算用のバリデーションモデル、大規模な系の生成熱と原子化エネルギー、遷移金属を含む系でのプロパティ計算、電場依存特性の計算、複雑系の振動/電子スペクトル予測−など。
また、オプトエレクトロニクスおよび反応系を含む領域に対応するため、Rグループをもとにしたライブラリー発生、複雑なプロパティ計算の自動化、励起状態と光吸収スペクトル、電子構造と電子軌道の可視化、安定性と活性のバランスを調べる反応エネルギースクリーニングといった機能が搭載されている。
MaestroのGUIで利用できるため使いやすいことに加え、KNIMEに対応しているために解析手法の組み合わせや自動化、ユーザープログラムの組み込みなども容易に行える。
同社では、材料科学のサイエンティフィックアドバイザーとして、カリフォルニア工科大学のウィリアム・ゴダード3世教授を迎えており、今後は電池材料や有機EL材料への対応など、設計・解析対象を順次広げていく予定だという。
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