アクセルリスが「Discovery Studio」の最新バージョン4.0

大規模MDシミュレーション機能強化、非結合相互作用を認識

 2013.10.23−アクセルリスは、生命科学系統合モデリングシステム「Accelrys Discovery Studio」(ディスカバリースタジオ)の最新バージョン4.0(DS4.0)を開発、提供開始した。シミュレーションによる創薬のための予測的科学を実現するシステムで、計算精度・予測精度をさらに改善するとともに、計算化学の専門家ではない生物系の研究者などにも使いやすくなるよう、操作性を高めている。とくに、今年のノーベル化学賞を受賞したマーティン・カープラス教授が開発したことで知られている分子動力学法(MD)プログラム「CHARMm」の最新バージョンも組み込まれている。

 今回のDS4.0は、最新の科学を反映した計算エンジンの高度化が大きなポイント。とくに、「CHARMm」の最新バージョン37b2が搭載された。最新の“charmm36力場”をサポートしており、たん白質、核酸、糖、脂質、およびマニュアルで原子タイプをアサインした低分子化合物用の“CGenFF”が使用できる。「CHARMm」はもともと、アクセルリスの前身の1社であるポリジェン社が製品化したプログラムで、その創業者兼開発者がカープラス教授だった。生体高分子用のMDプログラムとして高い支持を得ているが、アクセルリスでは現在、パートナー製ソフトウエアの一部として「CHARMm」を「DS」のエコシステムに組み込んで提供している。

 その他の計算エンジンとしては、量子化学系プログラムとして「DMol3」の最新バージョン6.1SP2と「VAMP」の最新バージョン10.0、たん白質構造予測などを行う「MODELER」の最新バージョン9v12に対応。また、高速なMDプログラム「NAMD」のサポートも強化された。とくに「DMol3」では、ハイブリッド汎関数のB3LYPが利用できるようになったという。

 MDシミュレーション全体については、抗体医薬開発など大規模な系を対象にした改善点が目立つ。その一つが溶媒効果を加えた計算が大幅に高速化されたこと。抗体のまわりに多数の水分子を配置するなど、サイズ制限なしで大規模な系をMDで解析することが可能。カウンターイオンを加えることもでき、溶媒の位置を最適化するオプションも搭載している。(写真参照)

 また、ナノ秒以上の長時間スケールのMD計算について、そのスケーラビリティとパフォーマンスが強化された。複数の出力ファイル(DCDファイル)が扱えるほか、複数のシミュレーションからフレームや原子のサブセットを保存することも可能。計算の進行に合わせて、温度やエネルギーの時間変化を自動的にプロットする機能もついている。長時間シミュレーションは計算が途中で失敗すると時間的損失が大きいが、常にシミュレーションの品質をチェックすることでその問題を避けることができるということだ。

 さらに、今回のDS4.0での目玉が、非結合相互作用の認識機能。世界中のユーザーのフィードバックを得ながら開発・搭載した新しい機能で、受容体とリガンドとのドッキングに基づくデザインを改善するために役立つ。望ましい相互作用、望ましくない相互作用、満たされていない相互作用など、最新の研究に基づいた幅広い情報を提示できる。真の活性化合物とデコイとの違いを識別したり、重要な特徴とマイナーな相互作用を区別したりすることにより、等価な活性を持つ新規な骨格を同定できる可能性が高まるという。(写真参照)

 各種の予測演算を迅速に実行できる「Pipeline Pilot」(パイプラインパイロット)が組み込まれているので、計算のプロトコル編集も自由に行えるなど、柔軟性に優れている。

                   ◇       ◇       ◇

 バイオ医薬品開発を支援する機能としては、新たにジスルフィド結合予測機能が搭載された。立体構造が適切な位置にあることに加え、立体障害、熱運動性、表面からの残基の深度などの因子も考慮して、ジスルフィド架橋が生じる部位を予測する。変異を導入した際などに、たん白質の安定性がどう変わるかを解析できる。

 また、複数の残基に対してマルチミューテーションを行うことも可能になった。それぞれの残基ごとに変異するアミノ酸の種類を指定する際にも、わかりやすく操作できるように工夫されているようだ。

 さらに、抗体データベースの強化によって、あらかじめクリーンアップされたFabおよびFvテンプレート構造が提供されるほか、隠れマルコフモデルに基づく配列解析ソフトの最新版「HMMER 3.0」のサポートなども行われている。抗体モデリング機能も、1つのテンプレートだけでモデル構築ができるなど、使い勝手が良くなっている。





******

<関連リンク>:

アクセルリス(日本法人トップ)
http://accelrys.co.jp/

アクセルリス(Discovery Studio 製品情報ページ)
http://accelrys.co.jp/products/discovery-studio/index.html

アクセルリス(DS4.0の新機能紹介のためのフォーカスグループミーティング)
http://accelrys.co.jp/events/2013-ds-fgm.html


ニュースファイルのトップに戻る