米CASのマニュエル・グーズマン新社長が会見

さらなる成長へ意気込み、新興国への進出や新分野への展開など

 2014.03.09−米ケミカルアブストラクツサービス(CAS)は6日、昨年9月末に就任したマニュエル・グーズマン社長(Manuel Guzman , President)による記者会見を都内で開催した。国内のパートナーである化学情報協会(JAICI)との連携を強調しつつ、今後中南米や東南アジアなどの新たな地域への進出、新しい製品やソリューションの開発に乗り出す考えを示した。

 CASは米国化学会(ACS)の情報部門で、化学物質に関する世界の公開情報すべてを収集し、分類・整理することを目的とした機関。設立は1907年で、本部はオハイオ州コロンバスに置かれ、1,300人のスタッフが勤務している。専門知識を持つ科学者チームが世界の学術雑誌1万誌以上と63機関が発行する特許に目を通し、ファクトデータベースの「CAS REGISTRY」、文献データベースの「CAplus」をはじめとする各種データベースを整備している。これらCASのデータベースは、一般研究者向けの「SciFinder」、および知的財産(IP)プロフェッショナル向けの「STN」という2種類のサービスを通して利用することができる。

 グーズマン氏は、ベンチャーの立ち上げや大手ベンダーでのマネジメントを含め情報事業での豊富な経験があり、21年間CASを率いた前任のロバート・マッシー氏にかわって昨年9月末に社長に就任したばかり。「CASの歴史と実績、そして化学情報分野でのブランド力の強さなどに対して、もともと良い印象を持っていたが、実際に入ってみて、優れた人材が豊富なことに驚いた。みな高い忠誠心を持っており、30年以上働いている人もいる。効率的なインフラがあり、技術力も際立っている。非常に優れた組織に来たとわくわくした」とグーズマン氏。「長い歴史を踏まえて、CASを次なるステージに押し上げることが私の使命だと思っている。さらなる成長を達成する機会はまだまだあると意気込んでいる」と述べた。

 CASでは現在、SciFinderとSTNのシステム面の刷新、プラットホームの共通化などを進めており、今後2−3年はコンテンツの拡充や検索技術の高度化など、既存の製品・サービスのグレードアップに集中する。グーズマン氏は、そののちに新しい取り組みに着手したいとした。

 「デジタル情報なので世界中のさまざまな地域へデータベースの提供が可能。とくに、中南米や東南アジアへの進出を狙いたい」とグーズマン氏。CASデータベースの利用は基礎研究とのかかわりが強いため、これまではやはり欧米、そして日本での活用が中心だったが、今後は新興国でも研究開発の進展が期待されるという。また、「文献・特許の調査を通じて幅広い情報を持っているので、ピュアな化学の世界だけでなく、幅広いライフサイエンス領域、材料科学の分野へも進出することができる。どれくらいのニーズがあるか、収益性との見合いにもなるが、いろいろな検討を行っている。そのほか、CASが蓄積しているデータは膨大だが、そうしたビッグデータを活用して、科学上のより良い意思決定を助けるようなサービスにはまだ手つかずだ。そうした分野にもチャンスがあると思う」とするなど、今後のさまざまな事業計画の可能性を示した。

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 今回の会見に同席したクレイグ・スティーブンス(Craig Stephens)販売担当副社長は、「21世紀に入って化学物質の情報量は急増しているが、学術論文からの収録が1ケタ増なのに対し、特許からの収録は2ケタの伸び。とくにこの12カ月でいうと、新物質の80%は特許の中で開示されたものだ。それも中国の特許が著しく伸びている」と最近の傾向を解説。中国特許を取り込むためのオペレーションを強化していると強調した。

 会見の後に開催されたJAICIフォーラムは、企業のIP担当者らを招待して行われ、スティーブンス氏が昨年6月にリリースした「新STN」についてその機能を紹介した。特許データの網羅性に優れているいることに加え、システム上の制限も取り払われて、プロの要求にきめ細かく応えることのできるサービスになっているという。また、マーケティングの観点から、研究者向けのSciFinder、IPプロ向けのSTNという両輪は変えず、それぞれを強化していくとした。

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<関連リンク>:

米CAS(トップページ)
http://www.cas.org/

化学情報協会(トップページ)
http://www.jaici.or.jp/


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