同社は現在、医療機関向けや製薬業向けの情報システムで約1,000億円の売り上げを計上している。とくに、電子カルテシステムは国内トップのシェア34％、大学病院に限ると同48.6％のシェアを握っているという。さらに、地域医療ネットワーク「HumanBridge」を提供しており、長崎県の糖尿病患者向けケアサービスなど、全県レベルのネットワーク化で全国各地に導入実績を築いてきている。
富士通がヘルスケア分野の事業戦略を強化
2018年度に倍増の2,000億円目指す、未来医療開発センターを設立
2014.03.19−富士通は18日、ヘルスケア分野のシステム事業を強化し、5年後の2018年度に2,000億円の売り上げを目指す事業計画を発表した。昨年12月にこの事業領域の司令塔となる社長直轄の社内横断組織「未来医療開発センター」を設立しており、次世代電子カルテや医療情報の地域ネットワーク、ゲノム情報と診療情報を統合的に活用する新たな情報基盤づくりなどを進めていく。
同社は現在、医療機関向けや製薬業向けの情報システムで約1,000億円の売り上げを計上している。とくに、電子カルテシステムは国内トップのシェア34％、大学病院に限ると同48.6％のシェアを握っているという。さらに、地域医療ネットワーク「HumanBridge」を提供しており、長崎県の糖尿病患者向けケアサービスなど、全県レベルのネットワーク化で全国各地に導入実績を築いてきている。
また、新薬開発の支援でも、創薬研究から非臨床試験、臨床試験、製造販売後調査まで、すべてのプロセスをカバーするソリューションを揃えている。とくに、製薬業向けの治験業務支援システム「DDworks21」は国内で85％、安全性情報管理システム「パーシヴ」は同じく60％のシェアを持つということだ。電子カルテと治験業務システムを連携させて、医療機関から臨床検査データを電子的に集める“EDC”（エレクトリックデータキャプチャー）を実現したクラウドサービスも提供している。
これらの既存領域に、新分野への取り組みを加えて、事業規模を倍増させようというのが今回の戦略の狙い。2018年度の売り上げのイメージは、既存分野が成長して1,300億円、新規分野で700億円の合計2,000億円となる。同時に、2018年度までの5年間に約300億円をこの分野に投資することにしている。
新規分野としては、すでにいくつかの長期的な技術開発が進んでいるが、その１つが理化学研究所と共同研究している“１細胞診断システム”。これは、生きた細胞に微細な針を挿入して薬物や代謝物などの成分を吸い取る装置で、細胞内の分子の動きをリアルタイムかつ網羅的に検出することができる。医療現場で迅速・簡便に使用できる分子診断システムとして開発中である。例えば、さまざまながん細胞の代謝パターンをナレッジ化することにより、がんの種類や治療効果、進行度の診断などに役立てることを目指しているという。これが、新たな検診サービスや治療法につながれば、将来の事業分野としての期待が出てくる。
また、コンピューターシミュレーションに基づくIT創薬も、ハード・ソフトの進歩で実用域に近づきつつある。東京大学先端科学技術研究センターとの共同研究を通じ、医薬候補化合物の創出に関する一定の成果が得られており、「TCクラウド」による高速な計算環境の利用もスタートしている。IT創薬のためのハード・ソフト・サービスが普及すれば、これも大きな事業になるというわけだ。
さらに、東京大学との共同による心臓シミュレーターの開発では、スーパーコンピューター“京”を用いて、心臓の胎動を心筋レベルから精密に再現したモデルを作成。心臓外科手術の術式の効果や予後の予測に活用することを目指している。この心臓モデルはきわめて精密であるため、１回の拍動を計算するのに、フル構成に近い“京”で11時間の計算が必要だったという。
加えて、東京医科歯科大学との共同研究により、個別化医療に向けたデータ解析基盤の構築にも取り組んでいる。現在、疾患の発症には遺伝的な要因と環境生活的な要因の両方が影響し合っていると考えられており、個別化医療・個別化予防を実現するためには、個人の遺伝情報（ゲノム、たん白質、転写、代謝物など）と環境情報食生活、運動習慣、飲酒、喫煙など）を大量に集積する必要がある。米国ではすでに先進的な医療機関が遺伝情報を利用した医療を実施しているほか、英国でも50万人の医療情報を追跡してデータベース化するバイオバンク構想が進行しているという。
東京医科歯科大学と取り組んでいるのも、まさにこのバイオバンクづくりで、まずは大量の患者情報を集め、そのビッグデータの利活用方法を探り、先制医療・個別化医療に役立てることを目指している。
そのほか、患者の個人情報を秘匿しつつ高速にデータ検索する技術、人体に照射した電波の反射を利用する非接触バイタルセンシング技術など、事業化の可能性のある要素技術をいろいろ準備しているということだ。
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＜関連リンク＞：
富士通（ヘルスケアソリューションの紹介ページ）
http://jp.fujitsu.com/solutions/medical/
富士通（ライフサイエンスソリューションの紹介ページ）
http://jp.fujitsu.com/solutions/life/
