CCS特集2014年夏:QuantumWise Japan

計算手法の強化で応用拡大、より現実的な系を解析

 2014.06.25−QuantumWise Japan(クオンタムワイズ)は、ナノスケールにおける電子デバイスおよび電子材料のモデリングを専門とするベンダー。量子力学的手法に基づく計算エンジン「Atomistixツールキット」(ATK)と、モデル構築から計算の実行、解析結果の可視化までを行う「Virtual NanoLab」(VNL)を開発・販売しており、近く最新の2014年版がリリースされる。

 同社は、共同研究を実施している東京理科大学の協力により、この分野の最先端の研究者を集め、昨年に初めてのワークショップを国内で開催した。今年の第2回は本社のあるデンマーク・コペンハーゲンで7月1日から行われる予定である。

 東京理科大との共同研究は、当初の2年間の予定が延長され、今年9月からは4年目に入ることが決まっている。熱電変換素子などをターゲットにしたもので、論文発表や内外の学会での口頭発表なども行われ、研究成果の一部はすでに製品にも組み込まれ始めているという。

 さて、近日リリースの最新版についてだが、大きなポイントはスピン軌道相互作用の計算が可能になったこと。とくに、最近注目されているトポロジカル絶縁体(内部は絶縁体だがエッジ部分に金属状態が生じている物質)の計算が可能。タイトバインディング法と密度汎関数法の両方で利用できることもユニークだとされる。

 また、固体内における電子輸送の解析で、電子格子相互作用を考慮できるようになった。これは運動する電子が格子振動(フォノン)によって散乱される現象をとらえるもので、より現実的な系でのシミュレーションを実行することが可能。

 さらに、VNLで利用できる外部エンジンとして、ABINITやVASPに加え、FHI-Aimsに対応した。そのほか、さまざまな計算の途中結果を取り出して、ユーザーが自分で活用できるようにする機能も実装された。


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