2014年冬CCS特集:TSテクノロジー
受託研究で豊富な実績、有機半導体材料のDB化も
2014.12.04−山口大学発ベンチャーのTSテクノロジーは、計算科学の専門ノウハウを生かした受託計算・受託研究、研究支援のためのシステムインテグレーション、高速計算のためのシステム販売事業を連携させて、生命科学や材料科学領域の高度化する研究ニーズに応えている。
中核事業の受託研究は、2009年の設立以来、100件を超えるプロジェクトを実施。1〜3ヵ月の短期から数年にわたるものまでさまざまだが、化粧品有効成分に関する新規合成ルート探索、リチウムの誘起効果によるキノジメタン系化合物の反応機構解析、カーボンリボンに関するバンドギャップ解析、光学分割触媒の分子論的解析および候補構造のスクリーニング、比誘電率および酸化還元電位の計算化学スクリーニング、スプレー缶内における活性物質の相互作用反応解析など、ユニークなテーマに取り組んできた。
とくに、評価が高いのが自由エネルギー計算によるキネティクス(反応速度論)シミュレーション。化学合成の際の反応時間や最終生成比を正確に求めるもので、多段階反応や競合反応があるなど反応間の平衡関係が複雑な場合でも、逆反応を含めた素反応の速度差を精密に考慮することが可能。実験ともよく合う結果が得られるため、計算で得られた数値で実際の現象を定量的に考察することができるという。
また、手軽に計算結果だけを知りたいというニーズには、解析項目をメニュー化した「クイックオーダー」も用意しているが、最近では計算化学について学びたいという問い合わせも増えてきているため、オンサイトで講習会を実施するサービスも開始する。計算化学の基礎から物性解析、反応解析までを網羅した3日間のカリキュラムなどを用意しており、ハンズオン形式で実際にパソコンを操作しながら実践的な知識が身につくようにする。大学を母体としたベンダーであるだけに、教育はお手の物だといえるだろう。
一方、新たな動きとしては、経済産業省が平成25年度補正予算で実施している「ものづくり・商業・サービス補助金」制度に、「有機半導体材料のための量子化学バンドギャップスクリーニングデータベースの開発」の名称でプロジェクトが採択された。有機ELなどの次世代材料として有望な骨格を持つ26万種の化合物に対して量子化学計算を実施し、バンドギャップ、イオン化ポテンシャル、電子親和力などの理論物性値を用いたスクリーニング用のデータベースを構築する。開発期間は約1年で、最終的には事業化を目指す予定だ。