BIOVIAが材料設計シミュレーションでコンソーシアム設立へ

マルチスケールでの予測技術確立、複合材料・電子デバイスなど対象

 2015.06.25−ダッソー・システムズ・バイオビア(BIOVIA)は、材料設計のミクロ/メソ/マクロ領域をつなぐマルチスケールシミュレーション技術を確立する目的で、コンソーシアム(マルチクライアントプロジェクト)の設立準備に入った。高分子の配合・複合化、化学反応と熱流体、リチウムイオン電池などのデバイス特性−といったテーマを中心にプロジェクトの大枠を固める。日本の材料メーカーのニーズをもとに企画したものだが、正式にコンソーシアムがスタートする際には海外のユーザーにも参加を呼びかける予定だ。

 材料設計のためのシミュレーションは、原子・分子レベルのミクロ領域、分子集合体を中心にした材料の組成や構造に注目したメソ領域、工業材料として使用される際の強度や特性を解析するマクロ領域−にざっくりと分類することができるが、計算すべき空間スケール/時間スケールに何ケタもの開きがあるため、全体を統合してシミュレーションすることは非常に困難。一気通貫のマルチスケールシミュレーションの考え方自体は20〜30年前からあるが、いまだ実現してはいない。

 ただ、ミクロ領域とメソ領域の連携はこの十数年でかなり進んできており、商用ソフトもいくつか販売されている。バイオビアの「Materials Studio」もその1つだ。

 現段階での最大の課題は、メソ領域とマクロ領域の連結である。これは、ミクロ/メソ領域をカバーするCCSベンダーと、マクロ領域を扱うCAEベンダーが別の企業であることも一因。その意味で、ダッソー・システムズ(3DS)はグループにCCSベンダーのBIOVIAとCAEベンダーのSIMULIAの両方のブランドを抱えているため、双方をつなぐうえで格好のポジションにあるといえる。

 CAE側からみても、解析の高精度化をさらに推し進めるためには、異種材料の接合状態や複合化による複雑な材料特性など、ミクロ/メソ領域の情報をインプットすることが必要になってきている。

 そこで、現在計画中のコンソーシアムでは、実現可能なテーマを選んでミクロとマクロをつなぐ具体的な事例を確立し、まずその有効性を示すことを目指す。そして、それらの事例を拡張して、産業界の現実の課題に適用できる方法論を開発していくことにしている。具体的なテーマとしては、自動車タイヤや炭素繊維強化プラスチック(CFRP)など複数の材料が混合あるいは複合化したモルフォロジーとその物性予測、自動車排気ガス浄化触媒や固体酸化物形燃料電池(SOFC)などの化学反応をともなう熱流体解析、リチウムイオン電池などのデバイス特性の予測−の3分野に取り組む予定。

 モルフォロジー関係は、さらに3分野4テーマに分かれる。1番目は「3D画像」で、材料のX線CT画像のグリッドデータから均質化法で構成方程式を取り出し、SIMULIAブランドのCAEソフト「Abaqus」を使った変形・応力解析などにつなげる。まずは、ガラス繊維強化プラスチックを対象に簡単な事例をつくる方針だ。

 2番目は「熱硬化性樹脂の架橋反応」と「相分離」。前者では、Materials Studioで熱硬化性樹脂の分子モデルを構築し、評価するためのスクリプト開発などを行う。後者では、ブロックコポリマーの相分離構造のモルフォロジーデータを使って、Abaqusによる変形・応力解析などが行えるようにする。

 3番目は「クラック伝播」で、Materials Studioで樹脂の剥離や界面特性の計算を行い、その結果をAbaqusにつなげてクラックの伝播を解析するかたちになる。

 次に、化学反応と熱流体の関係では、ペーパー触媒を利用したSOFCを対象とし、Materials Studioに化学反応モデルや吸着・拡散モデルを組み込んで、統計熱力学的解析を通し、化学反応フローを計算するための新しいプログラム開発を行う。

 最後のデバイス特性では、正極・負極・電解液の各シミュレーションを組み合わせて、リチウムイオン電池のI-V特性を予測することを目指す。正・負極と電解液界面におけるリチウムイオンの拡散抵抗がI-V特性に影響する主要因であると仮定し、各材料のQM/MD計算を行って、それらを組み合わせることにより電池としての性能を予測しようというものだという。

 すでに、それぞれのテーマで指導・監修役となるアカデミアとの調整も終わりつつあるようだ。最初の1年は簡単な事例づくりに集中し、2年目から本格的にコンソーシアムを立ち上げて具体的な開発作業に入っていく。並行して、コンソーシアムに加入するメンバー募集も進める予定だ。

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<関連リンク>:

ダッソー・システムズ・バイオビア(日本法人トップページ)
http://accelrys.co.jp/

ダッソー・システムズ・バイオビア(Materials Studio 製品紹介ページ)
http://accelrys.co.jp/products/materials-studio/index.html


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