2015年夏CCS特集:物質・材料研究機構

国内最大級の材料DB、データ駆動型の基盤構築へ

 2015.06.25−物質・材料研究機構(NIMS)は、材料開発の新潮流として期待される“材料インフォマティクス”のためのプロジェクト「情報統合型物質・材料開発イニシアティブ」(MIII)をスタートさせた。国内の産学官の総力をあげてビッグデータを活用し、磁性材料・蓄電池材料・伝熱制御材料など具体的な産業応用を目指していく。

 NIMSは、材料情報ステーションを核に国内最大級の物質・材料データベース「MatNavi」をインターネット上で公開。高分子材料の「PoLyInfo」、無機材料の「AtomWork」、金属材料の「Kinzoku」をはじめ、国内で長年蓄積された20種類近いデータベース、データシートを管理・運営している。登録ユーザー数も着々と増え、いまでは10万人を超えている。

 とくに人気のあるPoLyInfoは、2万種類のポリマーをカバーしており、登録されている物性値は28万件以上。複雑に分岐したポリマーに対応しやすいように、登録システムも刷新しているという。最近では、所内の研究者がMatNaviを通じて研究成果を公開したいという要望を寄せるケースも多く、実際に今年4月に計算状態図データベース「CPDDB」を新規に公開した。

 また、大幅に内容を強化している電子構造計算データベース「CompES」は、第一原理計算に基づくデータチェックを入念に進めており、今年度中にはリニューアル公開する予定だ。データに関するユーザーからの評価をフィードバックする仕組みを初めて組み込む計画もあるという。

 一方、新プロジェクトの「MIII」は、実験、理論、計算に次ぐ第4の科学としての“データ”に着目し、材料開発をデータ駆動型に変革することを目指したもの。材料インフォマティクス向けの使いやすいデータベース構築を進めながら、最先端の情報科学・データ科学手法を材料開発分野に展開し、産業界における課題やニーズに対応できるソリューションを短期間で構築していく。

 プロジェクト期間は5年間で、材料情報ステーションもデータの格納や提供に関係したシステムづくりや、MatNaviのデータの活用などで協力体制を取っていく。


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