富士通が分子モデリング最新版「SCIGRESS 2.7.1」をリリース
LAMMPSとの連携機能強化、pKa予測の特許技術実装も
2015.08.19−富士通は、計算化学統合プラットホーム「SCIGRESS」を機能強化し、最新バージョン2.7.1を開発、8月から提供を開始する。専用のGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)から利用できる外部計算エンジンとして、要望の多かった分子動力学法「LAMMPS」との連携機能を強化した。また、分子の酸性度の尺度となる“アミン酸解離定数”(pKa)を予測する新手法を実装している。これは、昨年特許を取得(特開2014-157020)した技術で、他社製品にない機能であることから、新たな特徴としてアピールしていく考えだ。
SCIGRESSは、2008年7月にリリースされた分子モデリングソフト。おもに材料設計分野(電気、自動車、化学、各種素材)で利用されており、これまでに国内で150サイト、海外でも30ヵ国への販売実績を持っている。ポリマー、デンドリマー、アモルファス、無限鎖ポリマー、溶液、界面などをモデル化するビルダーを備えており、自社開発の計算エンジンである半経験的分子軌道法の「MO-G」と分子動力学法の「MD-ME」などを利用して、安定構造やエネルギー、電子状態の解析、紫外・可視光吸収スペクトルの計算、化学反応の解析、各種物理量の表示・解析などを行うことができる。
計算の実行は、プロシージャーブラウザーによって計算目的にマッチした計算方法(プロシージャー)を選択することによって行える。計算対象、計算したい物性、計算手法の順に選択していくことで、簡単に計算を設定することが可能。大量の化合物に対して指定した物性計算を一括で実行するスプレッドシート機能も用意されているが、その場合にもプロシージャー機能を用いて、同じ物性値を複数の計算手法で予測し、その結果を比較するなどの使い方もできる。
計算エンジンは、富士通製だけでなく、外部製品である密度汎関数法の「ADF」、第一原理計算の「PHASE/0」との連携も可能。量子化学計算の「Gaussian」と「GAMESS」、分子動力学の「LAMMPS」もサポートしている。
とくに、今回の最新バージョン2.7.1は、LAMMPSとの連携強化が最大のポイント。これまではファイルを介した連携だったが、今回からLAMMPSのための機能がメニューの中に組み込まれるようになり、SCIGRESSの専用GUI環境でLAMMPS用の入力データ作成から計算実行、計算結果の解析までの操作がすべて行えるようになった。
専用の設定画面で計算条件を自由に指定できるほか、LAMMPSで使用できるSCIGRESSポテンシャルライブラリーを36種類追加している。対応するプロシージャーも追加されて、だれでも簡単に計算を実行できるが、エディターで入力ファイルを直接編集することも可能。上級者であれば、LAMMPSのすべてのコマンドを駆使することができる。
一方、最新バージョンのもう1つの目玉が、アミンの酸解離定数(pKa)予測機能。これは、Cumulated Bond Order(CBO)をベースに、結合次数の和を使ってQSPR(構造物性相関)のための良い記述子がつくれないかという着想に基づく研究が土台になっている。結果的には、CBOを利用すると、計算手法が半経験的方法(MO-G)でも密度汎関数法(GAMESS)でも同等の予測精度が出ることがわかり、いずれの場合も従来のQSPRより精度は高かったという。この手法を、84種類の非芳香族アミン、49種類の芳香族アミンで評価したところ、相関係数0.98−0.99を得たという。
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<関連リンク>:
富士通(HPCソリューションのページ)
http://www.fujitsu.com/jp/solutions/business-technology/tc/sol/
富士通(SCIGRESS 製品情報ページ)
http://www.fujitsu.com/jp/solutions/business-technology/tc/sol/scigress/index.html