科学技術情報サービス「STN新プラットホーム」が機能強化
マルクーシュ検索で特許調査の網羅性向上、データベースも拡充
2015.08.21−米ケミカルアブストラクツサービス(CAS)と独FIZカールスルーエは、共同で運営している科学技術オンライン情報サービス「STN新プラットホーム」を機能強化したと発表した。マルクーシュ構造検索機能の追加、データベースの拡充、エクスポート形式の追加に加え、ワークフローやインターフェース面も補強されている。「STN」は知財専門家向けのサービスであり、今回の機能強化によって特許調査における網羅性が大幅に向上したという。
近年では、新しい化学物質が特許で公開されるケースが多くなっており、知財専門家にとってはこれらを効率的かつ確実に検索できるツールが不可欠である。そこで、今回の機能強化の最大のポイントはマルクーシュ構造を収録したデータベース「MARPATファイル」が提供されたこと。マルクーシュ構造は特許中に表記される化学構造の一般式で、「MARPATファイル」には1961年以降の特許から約110万件のマルクーシュ構造データが収録されている。
「STN新プラットホーム」は、簡単に複数のデータベース(STNではファイルと呼ぶ)を横断的に検索できるため、今回の「MARPATファイル」に文献データベースの「CAplus」や化学物質データベースの「CAS REGISTRY」「Derwent Chemical Resource」などを組み合わせることで、化学物質に関する特許調査の網羅性が向上する。同じ構造質問式で、特定の物質構造と一般式に基づくマルクーシュ構造を一括して検索することができる。
また、新たに利用可能なファイルとして、工学分野の広範な文献を網羅した「COMPENDEX」、物理や電気・電気工学に関する文献データベース「INSPEC」、石油・石油化学に関する文献データベース「ENCOMPLIT」、石油・石油化学に関する特許データベース「ENCOMPPAT」、石油関連分野の文献データベース「TULSA」が追加された。また、化学物質の同定情報を集めた「REAXYSFILE」が利用できるほか、生物学・生物医学分野の文献データベース「BIOSIS」にも特許情報が付加されている。これにより、「STN新プラットホーム」で利用できるファイルは約30種類に増えたことになる。
さらに、共通特許分類(CPC)および国際特許分類(IPC)のシソーラスも利用できるため、特許分類の階層関係を確認しながら検索戦略を立てていくことが容易になったということだ。
そのほか、専用の構造式作図ツールがJavaを使わないタイプに変更されたため、Javaプラグインのインストールや更新などの手間が不要。実際に構造をスケッチしなくても、CAS登録番号やSMILES、InChIで構造を呼び出す機能も搭載された。「Derwent World Patent Index」(DWPI)と「Derwent Chemical Resource」(DCR)の間での特許と物質のクロスオーバー検索をワンクリックで行う機能も盛り込まれている。すべてのデータベースをXML形式でダウンロードできる機能も便利だという。
なお、国内ではSTN関連のサービスは化学情報協会(JAICI)を通じて提供されている。
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<関連リンク>:
化学情報協会(STN新プラットホーム紹介ページ)
http://www.jaici.or.jp/newstn/index.html
化学情報協会(STN新プラットホームで利用可能なデータベース一覧)
http://www.jaici.or.jp/newstn/content.html