2015年冬CCS特集:シュレーディンガー

M&S領域で先進機能、プラットホーム製品に関心

 2015.12.03−シュレーディンガーは、創薬研究をターゲットとしたモデリング&シミュレーション(M&S)技術で急成長したベンダーだが、ここへ来て研究コラボレーションの基盤となるエンタープライズプラットホーム製品でも存在感を発揮しつつある。とくに、グラクソ・スミスクラインと共同開発した「LiveDesign」は国内市場の関心も高く、具体的にパイロットテストに入るユーザーも出てきているという。

 同社のソリューションは、低分子ドラッグディスカバリー、バイオロジクス、マテリアルサイエンス、ディスカバリーインフォマティクス−の4分野のスイート製品に体系化され、トータルで30種類以上の優れたプログラム群が提供されている。

 M&S分野で最近注目されているのは、グラフィックプロセッサー(GPU)に対応した自由エネルギー摂動法計算「FEP+」。リード化合物の最適化と探索のための新手法で、これまで計算負荷が高すぎて行えなかった解析を初めて実用域に導いた。高速分子動力学エンジン「Desmond」と洗練された最新力場「OPLS3」を組み合わせることにより、実験と同等の精度で1週間に数千個の化合物を評価(東京工業大学のスーパーコンピューターTSUBAME2.5で実証)することができる。最新リリースでは、DesmondのGPU利用効率が高まり、計算速度はさらに2倍に向上しているということだ。

 同社は、こうしたモデリング技術を核にしながらソリューションを広げているが、今年から本格的にエンタープライズプラットホーム製品の国内での紹介を始めた。とくに、LiveDesignは内外の組織と研究コラボレーションを行うための基盤を提供するもの。外部のCRO(医薬品開発受託機関)などとの情報交換に加え、社内でM&S部門の専門家が化学合成部門の薬化学者とコラボする目的でも採用が進んでいるという。単にコミュニケーションを円滑にするだけでなく、創薬のアイデアをすぐに形にしてシミュレーションで検証するといった創造的な過程(時に試行錯誤も入る)を記録して知識化できることが大きなメリットになるようだ。

 また、新たに製品化したタンパク質とリガンドの立体構造データベース「PLDB」にも強い引き合いが来ている。豊富な検索・可視化機能を備えており、定評のある同社のM&S製品群と連携しやすいことが注目されている。

 一方、材料科学分野でも同社の知名度は高まりつつある。今年はウェビナーを何度か開催したが、すぐに定員が埋まるほど好評。分子動力学シミュレーションや物性予測などのテーマを取り上げた。実際にシステムを操作できるハンズオン形式のワークショップも増やしていく。直近の導入実績としては、京都大学化学研究所への採用が決まったという。


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