2015年冬CCS特集:ウェイブファクション
来年春に最新版提供へ、医薬品構造DBの閲覧可能
2015.12.03−ウェイブファンクションは、安価で使いやすい分子モデリングソフト「Spartan」の開発元であり、強力な計算エンジンとわかりやすい可視化機構を備えていることを生かし、企業の研究用途から大学・高専での教育用途にまで幅広い利用をサポートしている。現在、次期バージョンとなる「Spartan '16」を開発中で、来年春の米国化学会(ACS)での発表に向けて準備を進めているところ。中核の計算エンジンが刷新されるほか、3次元モードと2次元モードの操作感が統一されるなど、大幅な機能強化が図られる予定だという。
国内では、最近は計算化学の利用をはじめてみたい企業からの引き合いが増えている。また、教育用途では愛媛大学教育学部が松山市内の中学生を対象として開いた講座で、タブレット版の「iSpartan」が採用された。昨年度に初めて実施されたが、今年度も内容をブラッシュアップして行われたという。今後も教育用途の広がりが期待される。
一方、新たな取り組みとして、同社の日本支店はこのほど「Spartanで見る医薬品分子構造ハンドブック」(3,000円)を作成し、頒布を開始した。これは、東京薬科大学の土橋朗教授(情報教育センター長)が作成してきた3次元医薬品構造データベース「3DPSD」の内容を書籍化したもので、付属CR-ROMに入っている「SpartanView」を用いて分子モデルを自由に観察することができる。「Spartanスチューデントエディション」の30日間ライセンスも付いてくるので、それをダウンロードすると分子構造の作成・編集や分子軌道計算の実行なども可能だ。
この3DPSDは、日本で実際に使われている医薬品の分子構造を調べて集めたもので、1,200種あまりの構造データが収録されている。分子の大きさや形をあらわす電子密度表面や、原子と原子の結合をあらわす結合密度表面、分子中の電化の分布を示す静電ポテンシャルマップなどを眺めることで、医薬品分子についての理解を深めることができる。もともとは教育目的で整備されたものだが、社会人も含め多くの関心を集めると思われる。