2016年夏CCS特集:Quantum Wise

実用機能搭載で実績増、電子移動度計算など高度化

 2016.06.23−Quantum Wise(クオンタムワイズ)は、電子デバイスなどのナノスケールでのモデリング&シミュレーションに特化したベンダー。その中核は、量子論的手法と非平衡グリーン関数による電子輸送計算プログラムで、計算エンジンの「Atomistixツールキット」(ATK)と、モデル構築から計算の実行、結果の解析・可視化を行う「Virtual NanoLab」(VNL)の2製品を提供している。

 もともとは大学などアカデミックでの利用が多かったが、実際のデバイス設計に役立つ実用機能が搭載されるとともに、半導体メーカーなど民間企業への普及が拡大してきている。国内でも東京理科大学との共同研究(熱電変換素子が主テーマ)が5年にわたって続いており、最近では大学で学んだ研究者が企業に就職してソフトを使用するという例もあるようだ。

 最近の機能強化では、半導体の移動度計算において電子格子相互作用を考慮できるようになった。電子の移動度はデバイスの高速動作や低消費電力に関係するため、次世代の半導体材料開発では、まず移動度を知りたいというニーズが高いのだという。

 また、古典分子動力学(MD)を利用する「ATKクラシカル」がリリースされたのも大きなトピックス。これは独フラウンホーファーと共同開発したもので、無機分野の関数が充実していることが特徴。電池材料開発に役立つ熱伝導率の計算などで注目されており、今年11月にはフラウンホーファーから開発者を招いて国内で初のセミナーを開催することにしている。

 さらに、今夏に予定のバージョンアップでは、オーダーN法の導入、平面波基底への対応のほか、電極のモデルにリアルな電圧をかけて解析する“ワンプローブ”と呼ばれる機能も実装する。

 なお、国内のユーザーが着実に増加しているため、日本法人に技術スタッフを増員する予定である。


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