2016年夏CCS特集:TSテクノロジー
包括契約で計算を支援、量子計算と機械学習に注目
2016.06.23−TSテクノロジーは、山口大学発ベンチャーの計算化学ベンダーとして創業8年目に突入。着実に実績を重ねてきたが、昨年度は大きく飛躍した年になったという。受託計算や計算機販売などの事業が好調。とくに材料科学分野で、社内に計算の専門家がいない企業が外部の計算スタッフとして同社を利用するケースが増えているため、このほど専任者を割り当ててフルにサポートする包括業務委託契約にも応じていく体制を整えた。
同社の受託計算は、あらかじめ決まったメニューを提示した「クイックオーダー」、顧客ニーズに合わせてカスタム対応する「フルオーダー」があった。今回の「包括業務契約」は、一定の期間を定め、専任者が張り付いて課題に取り組んだり、計算を肩代わりしたりするもの。社内の計算部門に依頼する感覚で自由に活用することができる。費用は月額128万円を予定している。社内に計算スタッフがいる場合でも、生命科学系が専門で材料科学の問題には不慣れというケースもあるので、潜在的なニーズは大きいと予想される。
また、最近のトピックスとしては、今年の日本化学工学会で反応物の生成比を予測するキネティクス(反応速度論)シミュレーションについて発表した。受託計算などで取り組んだ仕事を発展させたもので、基質を共有し、かつ反応速度の異なる複数の反応が同一の系の中に混在している場合、その積分計算を効率的に制御する“マルチステップ・イクイリブレーティング(多段階平衡)アルゴリズム”を開発することにより計算を現実化したというもの。
最終的な生成比を求めるところまで解析を進めて、論文を準備中だという。また、現在は平衡系への対応のみだが、対象を非平衡系に広げることで現実に即した反応が扱えるようになる。最終的にはそこを目指していくという。
また、材料科学分野では、最近になって人工知能(AI)の応用が注目されてきている。量子化学計算と機械学習を組み合わせるようなテーマにも挑戦していきたいということだ。