CCS特集2016冬:化学情報協会
無機結晶構造DBを提供、材料インフォ分野に展開へ
2016.12.06−化学情報協会は、独FIZカールスルーエと米国立標準技術研究所(NIST)が共同で製作している無機化合物結晶構造データベース「ICSD」を、国内で注目が高まっている材料インフォマティクス市場へ売り込んでいく。機能性無機材料開発において、材料探索や物性予測のための計算化学に、また新規物質の同定や既知物質との比較検証に活用することが可能である。
ICSDは、X線解析による鉱物・セラミックス・金属間化合物など、元素と無機化合物の結晶構造データを収載したデータベースで、網羅性と正確性ですでに多くの研究者から高い評価を得ている。1,500誌以上の学術雑誌に発表された論文から18万7,000件のデータを収録しており、専門のスタッフがきめ細かなチェックをして年に2回のアップデートを実施。無機系のデータベースはほかにもあるが、ほぼすべてのレコードに原子座標データを付けているのはICSDだけだという。
結晶学データ関連の検索項目が充実しているため、結晶構造の観点からの文献調査が容易で、抄録を収録するレコードを増やしていることもあって、調査業務の効率を大幅に改善することができる。
とくに、材料インフォマティクスとの関連では、結晶構造を直観的に理解しやすい三次元グラフィックス表示するプログラムが組み込まれていることに加え、結晶学データや原子座標値が含まれたCIF(結晶学情報共通データ・フォーマット)ファイルを取得できることが注目される。これを利用して初期データを作成し、第一原理計算を行うことによって、電子構造やバンドギャップなどの計算値を材料インフォマティクス向けのデータベースに加えていくことができる。信頼できる計算結果を得るためには高精度の初期データが重要であり、そのためにICSDが役に立つというわけだ。このように、計算値も含めてデータを増やしていくことにより、機械学習などを用いた材料インフォマティクス研究をさらに前進させることができると期待される。
そのほか、X線および中性子線の粉末回折パターンをシミュレーションする機能も、新たに創製した材料の組成などを検証するために有効だという。契約形態は、ウェブ版とDVD版があり、ニーズに合わせて選択することが可能。ウェブ版については、2週間のフル機能無償トライアルを日本市場向けに提供している。
また、化学情報協会では、金属・合金を中心にした結晶構造データベース「CRYSTMET」(加トス・インフォメーション・システムズ)も提供中。こちらも17万2,000件以上のデータを収録している。