CCS特集2016冬:材料インフォマティクス
超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト 村山宣光プロジェクトリーダー(産業技術総合研究所)インタビュー
AIを材料向け最適化、計算で大量データを創出
2016.12.06−超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト(超超PJ)は、経産省プロジェクトとして、民間企業(Hi-Mat構成メンバー)との強固な連携のもとに完全集中研究方式で推進されることが特徴だ。材料開発期間を20分の1に短縮するという具体的な成果を目指している。
参加する企業16社の課題や目的を踏まえ、普遍的な基盤技術をまず確立するのが前半の3年間、次いで16社個別の材料開発へ軸足を移すのが後半の3年間の目標になる。研究内容が具体的なものになる可能性が高いため、プロジェクトの開発成果のオープンとクローズのバランスをどうとるかが課題になりそうだ。
材料インフォマティクスの関連では、米国MGIは金属材料がメインであるためそれなりにデータの蓄積があったと思うが、超超PJは有機材料をターゲットにしている。しかし、この分野はほとんどデータベースがない。そこで、まずはシミュレーションでデータをつくり出すことに力を入れる。並行して実験データも集め、それらを合わせて人工知能(AI)による学習を行い、材料の構造や組成と物性・機能とが関係する要素を探索していく。そのAIを材料開発用にチューニングし、最終的には望ましい機能・物性を持つ材料を設計するための“逆問題”が解けるようにしたい。
材料シミュレーションに関しては、産総研内部でこれまでに多くのソフトが開発されるなど豊富な財産がある。超超PJのスタートをにらんで、昨年11月に産総研に「機能材料コンピュテーショナルデザイン研究センター」を設立しており、30人の優秀な研究員がプログラム開発に取り組んでいる。必ずしもすべて国産でとは考えておらず、海外のソフトを活用する可能性もある。
超超PJの競争力の源泉は、材料設計に最適化された学習ずみのAIになると思う。MI2Iはデータベースを整備してAIにつなげる方向だと聞いてるが、超超PJは計算データを集めてAIにつなげる。それぞれ異なるが、互いに貢献し合い、材料インフォマティクスを盛り上げていきたい。