CCS特集2017年夏:富士通九州システムズ

変異原性のモデル改良、実証実験通じ自社開発強化

 2017.06.21−富士通九州システムズは、富士通やモルシスの製品群を販売するほか、海外子会社のFQSポーランドを含めた独自の製品開発体制を持ち、特異なノウハウでCCS事業を推進している。

 自社製品では、薬物相互作用シミュレーションソフト「DDI Simulator」の開発が進んでおり、薬物動態パラメーターを算出するためのフィッティング機能を追加して、今年夏に最新バージョンをリリースする。これまでは、エクセルなどの外部のソフトを使って行っていた作業で、血中濃度などのデータをインポートし、モデルを選んで解析してパラメーターを決定するまでの一連の作業をDDI Simulatorの中で行うことが可能。

 また、この機能を開発中に、大学などから教育的な価値があるとの申し入れがあり、フィッティング機能だけを単独で製品化することにした。ブラックボックスではなく、論理的な数式が確認できるため、薬学部の薬物速度論の演習に使用できるよう、年間20万円という低価格な料金設定を行っている。

 また、医薬品に含まれる不純物の変異原性を予測する“ICH M7”関連では、国立医薬品食品研究所が実施した「グローバルQSARプロジェクト」に、国産CCSベンダーとして単身参加し、8,000件のデータを利用して予測モデルを改良した。全体予測精度が83.3%、特異度が83.6%、感度が81.1%と良好な結果が出ており、最終テストを実施した上で薬物動態などの多機能予測ソフト「ADMEWORKS」に組み込む予定である。

 さらに、オンラインサービスとして提供している「ADME Database」は、ヒト、ファーストライン薬物を中心に定期的なデータ追加を重ねている。オリジナルはクロアチアのレンディック教授が作成したデータベースだが、現在のデータ更新はFQSポーランドがマニュアルキュレーションで実施している。それに加え、AI(人工知能)による自然言語処理で文献から関連データを自動抽出する試みに挑戦中。昨年から日本で行っており、今年上半期に実証実験が終了するという。

 一方、新しい取り組みとして、フィンランドのABOMICS社が開発している医療ナレッジデータベース「GeneRX」の実証実験を、日本の国立大学病院(2病院)で今年春から開始している。これは、ゲノム薬理学に関する医療ナレッジベースで、患者の遺伝子型に応じた正しい投薬量や適切な薬物の選択を支援する機能を持っている。日本の医療でも役立つかどうかを検証し、11月に行われる日本医療薬学会で発表することにしている。


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