CCS特集2017年夏:ウェイブファンクション
計算化学初心者に人気、講習内容をネットで配信も
2017.06.21−ウェイブファンクションは、パソコン版の統合分子モデリングソフト最新版「Spartan '16」を順調にリリースしている。先行してバージョンアップしたWindows版、マック版に続き、今年5月にはLinux版も出荷が開始され、最新バージョンでシリーズが出揃った。年内には教育用のスチューデント版もSpartan '16相当の機能に切り替わる。
大学や高専の教育用途でも多くの実績を持つSpartanは、量子化学をやさしい操作で利用できることが最大の特徴であり、近年では計算化学に初めて取り組もうとする材料系企業の研究者向けでも人気が高まっている。昨年度には、和歌山県工業技術センターの「ケミカルスマートものづくり 計算化学スクール」の使用ソフトとしてSpartan '16が選定され、同県内の企業向けに演習が行われた。
ソフトの普及に向けた国内での活動としては、無料で実施しているワークショップをメインに、各種学会などでの展示を通しユーザーのすそ野を広げてきている。とくに、ワークショップは定期的に都内で開催することに加え、要望によってオンサイトでの実施にも対応、好評を博している。
最近では、新しい試みとして、講習内容をビデオにして「Youtube」で配信するサービスを開始した。昨年12月に、開発者であるウォーレン・ヒーリー社長(カリフォルニア大学名誉教授)が行った「量子化学の最先端を行く人へのSpartan '16セミナー」の内容を公開中。講演内容をテーマごとに構成して、7本のビデオにまとめられており、いつでも自由に試聴することができる。また、2013年に日本化学会春季年会で行った特別講演「モバイル時代の分子モデリング」も、4本のビデオで学ぶことができる。
一方、学会発表としては、今年9月に札幌で開催される天然有機化合物討論会で研究発表を行う。これは、弘前大学および北海道大学との共同研究で、NMRを用いた天然物の構造同定を自動化する新しい手法に関するものだということだ。将来的に、Spartanの新機能に取り入れられる予定となっている。