米シュレーディンガーが製薬業エグゼクティブ向けイベント

ビル・ゲイツ氏が基調講演、「FEP+」の機能性を強調

 2017.06.23−米シュレーディンガーは、自社の創薬支援技術の有効性を製薬企業のトップエグゼクティブにアピールするため、5月30日と31日の両日、ニューヨークで「エグゼクティブ・ドラッグディスカバリー・サミット2017」を開催した。元マイクロソフト会長のビル・ゲイツ氏が基調講演を行うなど、約150人の出席者の注目を集めた。会議の中では、とくにタンパク質とリガンド分子との結合自由エネルギーを計算する「FEP+」が取り上げられ、競争力のある独自技術としてアピールされたという。

 同社のモデリング&シミュレーション(M&S)技術が注目されたきっかけが、同社自身が共同創設者となった米創薬ベンチャー、ニンバス社(Mimbus)の存在。いくつかのプロジェクトを走らせているが、そのうちのACC阻害薬プロジェクト(代謝疾患などが標的)を昨年4月に米ギリアドサイエンスが4億ドル(今後のマイルストーン次第でさらに最大8億ドルを支払う)で買い取った。同社ではさらに、モルフィック社とリレイ社といったベンチャーにも出資先を広げている。これらの成果は、同社のM&S技術が実際に新薬創出に貢献できることを証明したものと位置づけられている。

 ビル・ゲイツ氏は、ビル&メリンダ・ゲイツ財団を通じて、世界中の人々の健康と福祉の向上を目指す活動を精力的に展開しているが、実はシュレーディンガーの出資者の1人でもある。2010年に1,000万ドルを出資して以来、2012年にも2,000万ドルを追加出資している。当日は、「インシリコ創薬の偉大なチャレンジに、シュレーディンガーの多大な貢献が期待される」とコメントしたという。

 サミットのプログラムとしては、ヤンセンファーマ、バイエル、アストラゼネカ、ニンバス、サノフィなどがインシリコ創薬のインパクトについて講演したほか、シュレーディンガーが開発・提供しているソフトウエアスイートのプレゼンテーションも行われた。

 とりわけ強調されたのは「FEP+」。自由エネルギー摂動法(FEP)は計算コストが膨大になるためなかなか実用に供することが難しかったが、計算精度はきわめて高く、誤差は 1 Kcal/mol 未満。実験値と同列に扱うことのできる精度を実現している。「FEP+」は、高速分子動力学エンジン「Desmond」とGPU(グラフィックプロセッサー)によるアクセラレーションを利用して、これを実用域に引き上げたもの。結合親和性や選択性、突然変異耐性、溶解性などを、実験と同等の信頼性をもってインシリコで評価することができる。

 ただ、ユーザーにとってGPU環境を用意することが負担になる場合もあるため、ライセンス制度を工夫。通常のライセンス以外に、アマゾンウェブサービス(AWS)などの外部サービスを利用して100化合物を解析し終えるまで使用できる従量課金型、同社のデータセンターのGPUを自由に使用できるクラウドサービス型などの選択肢を用意している。

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シュレーディンガー(トップページ)
https://www.schrodinger.com/

シュレーディンガー(FEP+の製品紹介ページ)
https://www.schrodinger.com/fep+


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