ELNなどクラウド専門のアークスパンが急成長
バイオと化学が倍増、国内初のユーザー会も
2017.12.19−クラウド専門の化学情報管理ソリューションを提供している米アークスパンが、急速に業容を拡大している。今年はスタッフを40%増員しており、日本で技術サポート体制を整備したことにより、グローバルに24時間体制で問い合わせに対応できるようになった。顧客としては、バイオベンチャーおよび化学・食品分野が倍増の伸び。先月には日本で初めてのユーザー会を開催し、電子実験ノートブック(ELN)などの導入事例を紹介した。来年に向けてさらに事業体制を固める方針だ。
同社の設立は2010年6月。「ArxLab」(アークスラボ)の名称で、ELN、化学・生物情報の登録、アッセイデータ管理、インベントリー管理といったインフォマティクスアプリケーション、およびデータ解析のための「FTツール」をクラウドで提供している。ハンガリーのケムアクソン社が開発しているケミストリーエンジンを中核にしており、およそ9週間のサイクルで継続的に機能強化を図ってきている。
顧客数はすでに70社近くあり、8割以上が北米の企業だが、日本国内の導入実績も二ケタに迫っている。全体の内訳は、40%がバイオベンチャー、30%が製薬、20%が化学・食品、5%がアカデミアという比率。このうち、バイオベンチャーと化学・食品のセグメントは、今年倍増の伸びをみせて好調だという。オープンイノベーションのプラットホームとして、実際の利用者はCRO(医薬品開発受託機関)の研究員である場合も多いため、システム利用者の分布は北米が50%、アジアが45%、欧州3%、その他2%−というかたちになっている。
製品面では、4つのアプリケーションがすべてクラウドベースで、全体が統合されていることが特徴。レジストレーションは化合物だけでなく、生物系の情報登録や中分子創薬にも対応しているが、ELN側からみるとオンプレミスの他社レジストリーシステムともスムーズな連携が可能で、ELN機能だけをCROに使用させる製薬企業もあるという。
とくに、ELNは今年、新しいアドオンとしてワークフロー機能が搭載されたことが大きなトピックス。これは、ELNから他部署に対して合成依頼や試験依頼などのリクエストを発して、その進捗などをトラッキングする機能で、来年にはさらに機能を強化していく予定だという。また、検索機能も向上しており、ページの全文検索のほか、文字列入力を補完するオートコンプリート機能も追加された。ノートやページのロード時間・セーブ時間も大幅に高速化されており、快適に動作する。完成したノートをPDF出力する際の安定性やパフォーマンスも改善。構造式作図はChemDrawをサポートしているが、プラグインを使わないウェブブラウザーが増えているため、新たにケムアクソンのMarvin-JSにも対応するようになった。
来年の機能強化の予定としては、ユーザーインターフェースをさらに洗練させるほか、単一の設定画面ですべてのアプリケーションのコンフィグレーションが行えるように操作性を改善する。また、引き続き検索機能を強化し、FTツール内ですべてのアプリケーションから必要なデータを簡単に抽出できるようにする。
一方、11月に行われた国内初のユーザー会には50人ほどが出席した。カーデュリオンファーマシューティカルズ、アミカス ティラピューティックス、レボリューション メディソン、インテグリスなど、初開催ながらユーザー講演が充実した内容となっていた。
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