2018年夏CCS特集:JSOL
マルチスケール連携を強化、解析事例集の充実も予定
2018.06.20−JSOLは、材料設計のミクロからメソ、マクロ領域までマルチスケールに対応できるシミュレーションソフトを揃え、高分子材料や複合材料などの研究開発を支援している。とくに、自社製品の「J-OCTA」は海外での実績も拡大しており、機能面でもさらに磨きがかかってきている。
J-OCTAは、経済産業省の産学連携プロジェクトで開発されたソフトマテリアル向け統合シミュレーター「OCTA」をベースにしたシステム。同社はこのプロジェクトに参加して開発を担うとともに、プラットホーム型の商用版に仕上げて普及に務めている。
最近は複合材料開発での利用が増えており、複合材料の特性を予測する「Digimat」(ルクセンブルクのエクストリームエンジニアリング)、マルチフィジックスシミュレーションソフト「LS-DYNA」(米リバモアソフトウエア)、イメージデータ処理ソフト「simpleware」(米シノプシス)などを組み合わせることで強力なシミュレーション環境を提供。
このうち、simplewareは実際の複合材料サンプルによるCT(コンピューター断層撮影)イメージを三次元モデルに変換する機能を備えている。このソフトの中だけでも複合材料特性の計算が可能だが、J-OCTAなどとの連携も注目されているという。
J-OCTAについては、昨年12月にフリー版OCTAのバージョン8.3がリリースされており、J-OCTAも今年3月に最新バージョン4.0が提供開始された。とくに、外部プログラムとの連携が強化されたことが特徴で、フラグメント分子軌道法の「ABINIT-MP」がバンドルされたほか、第一原理電子状態計算ソフト「SIESTA」(スペインのSIMUNE)と組み合わせて利用する界面エネルギーツールが追加されている。無機材料の表面(スラブ)構造をJ-OCTAでモデリングし、その上に乗せた有機分子を任意の方向に回転/並進させながら、SIESTAでエネルギー曲面を計算することが可能。これを利用して、無機/有機界面の分子動力学計算に必要なLJポテンシャルパラメーターを算出することができる。異種材料の接着などの問題の解析に役立つという。
さらに、LS-DYNAでの大変形解析に連携させるためのインターフェース機能も新たに搭載された。J-OCTA内部では微小変形時の挙動に特化しているが、破壊に至るまでの大変形計算に対象を広げることが可能。J-OCTAからダイレクトにLS-DYNAが起動し、非線形構造解析に対応した材料モデルとして、弾塑性や粘弾性、超弾性などを設定することができる。これにより、相分離やフィラー分散構造を含む多相構造体の有限要素法解析が行える。
一方、7月に予定されているバージョン4.1では、新しいユーザー層から要望が高かった解析事例集の充実を図る。現在も事例データベースを内蔵しているが、かなりのボリュームがあるため、ほしい事例(解析のひな型)をダウンロードできるように変更し、バリエーションを大きく増やす計画だという。
J-OCTAは海外でも人気が出てきており、欧米で直販しているほか、韓国、インド、台湾に続いて中国にも代理店を設けた。化学のほか、電気・電子、自動車関係など用途も広がっており、将来的には海外比率を4割まで高める目標だという。インドでは大学での教育用途にも使用されており、ウェブ環境で学生がブラウザーからJ-OCTAを動かすような使い方もなされているということだ。