2018年夏CCS特集:シノプシス

電子設計自動化を拡張、クオンタムワイズを買収

 2018.06.20−EDA(電子設計自動化)のトップベンダーである米シノプシスが昨年9月、電子デバイスのナノスケールでのモデリング&シミュレーションに特化したデンマークのQuantumWise(クオンタムワイズ)を買収し、その日本法人の組織も日本シノプシスに統合された。電子設計の自動化を材料(原子)レベルにまで広げることが目的で、リリースされたばかりの最新版ではソフトウエアの連携がさらに進んできている。

 シノプシスは、半導体チップの設計を支援するEDAツールとIP(半導体設計資産)をビジネス領域としており、その意味で電子機器設計の最上流工程を抑えている。ただ、半導体回路はナノメートルスケールに微細化しており、原子・電子レベルの影響を無視できなくなっている。このため、旧クオンタムワイズの技術でさらに川上を取り込んだといえる。

 具体的には、密度汎関数理論(DFT)と非平衡グリーン関数(NEGF)の手法に基づき、ナノデバイスの非平衡電子状態を第一原理的/半経験的に計算するシミュレーター「QuantumATK」、専用GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)の「QuantumATK NanoLab」、古典力場を利用するための「QuantumATK ForceField」などから構成される。

 そして今回の合併によって、半導体プロセステクノロジーおよびデバイスの開発と最適化を行うシノプシスの「TCAD」と連携できるようになった。TCADのGUIであるSentaurusマテリアルワークベンチからQuantumATKを起動し、モビリティやバンドギャップなどのバルク特性、各種デバイス特性を計算して、その値をTCADの入力とすることができる。とくに、EDAユーザーは第一原理計算の専門家ではないため、求めたい特性を指定すれば、自動的にパラメーターが調整されるように工夫されているという。

 さらに、QuantumATKの最新バージョンでは、予測値の正確性を向上させるため、新規の平面波基底を搭載したDFTコードを内蔵。擬ポテンシャルもリニューアルされている。また、半導体物性に重要な移動度の計算が自動化されたことも大きな特徴。計算手順が複雑だったが、簡単に適用できるようになった。太陽電池素子の電流の大きさを予測する機能なども搭載されている。

 旧クオンタムワイズ時代は、グローバルでは大学などアカデミックユーザーが多いが、電子デバイス研究や材料開発が盛んな日本市場は民間企業の導入数で世界トップだったという。シノプシスとの統合で普及に一段と拍車がかかると期待される。


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