2018年夏CCS特集:TSテクノロジー

計算化学者育成事業に本腰、日本曹達との共同研究も

 2018.06.20−TSテクノロジーは、山口大学発ベンチャーとして設立された計算化学専門ベンダーとして、創業から10期目の節目を迎えている。受託研究・受託計算が6割、高速計算に適したマシン販売が3割、プログラム開発などその他業務が1割といった売上構成で、順調に成長を遂げている。

 主力の受託事業は、決まったメニューの計算を低料金・迅速に実施する「クイックオーダー」から、研究テーマに対してきめ細かく対応する「フルオーダー」、一定期間の専従体制で研究協力する「包括連携契約」(FTE契約)まで、ニーズに応じて幅広いサービスを提供している。とくに、包括契約が好評で、機能材料の蒸着メカニズムの解明など、計算化学的に高度な内容にも取り組んできている。この6月からも新規のプロジェクトがスタートしたということだ。

 一方、ここ数年の傾向としては、受託計算を依頼したあと、自分でも計算をやりたいと考える研究者が増えているという。これを受け、同社では講習会ビジネスに力を入れる考え。専門スタッフを講師として派遣し、例えば3日コースなどで、計算化学の基礎から、物性解析、反応解析まで一通りの講習を行う。一般的な内容だけでなく、顧客の研究課題に近い計算例を用いて、実践的な知識が身につくようにすることも可能。また、初心者にも使いやすいモデリングソフトとして、クロスアビリティが製品化している「Winmostar」を販売する契約も結んだ。

 一方、日本曹達との接着剤に関する共同研究が昨年、英国化学会の雑誌に掲載されたことに続き、今月18日からフランスのマントンで開催中の量子化学国際会議(16th International Congress of Quantum Chemistry)でポスター発表を行っている。ポリオレフィン向けの新しいポリマー系接着剤を対象に、その接着力がCH/π相互作用に基づいていることを計算化学で解明したという内容。今回は、論文をまとめたあとの新しい知見も使った発表になっているという。


ニュースファイルのトップに戻る