2018年夏CCS特集:クロスアビリティ

各種ソルバー対応で高機能、チュートリアル機能充実

 2018.07.23−クロスアビリティは、計算化学を中心にしたシミュレーションを活用した研究開発現場のコストダウン、および新たな研究テーマに向けた技術支援を行う独立系ベンダーとして、10年の節目を超えた。最近では、人工知能(AI)のための学習データをシミュレーションで創出するといった新しい取り組みも出てきているという。

 同社の製品は、自社開発している分子モデリングソフト「Winmostar」が主力。量子力学計算(QM)、分子動力学計算(MD)、固体物理計算を実行するためのGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)となるソフトで、無償で利用できるオープンソースソフトを中心に、数多くのソルバーに対応していることが最大の特徴。

 また、使いやすさにも定評があり、モデル作成は、有機分子、超分子、金属錯体、結晶に対応したチュートリアルが内蔵されており、初心者でも容易に計算化学に取り組むことが可能。主要なソルバーにもチュートリアルが用意されているため、計算化学の基本を学ぶ目的でも活用できる。

 フル機能のプロフェッショナル版のほか、計算領域別にQMパック(対応ソルバーはGaussian、GAMESS、NWChem)、MDパック(同Gromacs、LAMMPS、Amber)、Solidパック(同QuantumESPRESSO、OpenMX、FDMNES)に分けて購入することも可能。実際の計算は、イージーセットアップ機能を使用することで、設定項目が最小限になるように工夫されており、計算に不慣れなベンチケミストでも安心して使用できる。

 ライセンスは、シングルライセンス、在宅ライセンス、サイトライセンス、研究室ライセンス、コーポレートライセンスと多数用意されており、利用スタイルに合ったものを選ぶことができる。

 加えて昨年からは、Winmostarの機能をさらに拡張するため、アドオンソフトの提供を開始した。1つは溶媒和自由エネルギーを高速に評価する「FragmentER」で、東レと大阪大学・松林教授のグループが開発したもの。エネルギー表示法(ER)をベースにしており、従来の自由エネルギー摂動法よりも大幅に計算量が削減されている。2つ目は早稲田大学・中井教授のグループが開発した「DC-DFTB」。QM/MM/MD法などに比べて大幅に計算量を減らせるQM-MD計算手法で、分割統治法(DC)に基づいている。化学反応がともなう系をMDシミュレーションできることが特徴だという。また、3つ目として、物質の相溶性を評価するハンセン溶解度パラメーター計算モジュールを提供している。

 自社製品である強みを生かし、カスタマイズサービス「Winmostar for You」にも取り組んでおり、ユーザーの社内データベースとの接続、化学・材料系AIの構築および連結、スクリプトを利用した自動化、ベンチケミスト向けのUIカスタマイズなど、柔軟な対応を行っている。

 このほかに、Winmostarをプリインストールした高性能ワークステーション(ライセンスはノードロック型)がHPCソリューションズから提供されている。


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