ドットマティクス:バーレー副社長、ブラウン副社長インタビュー

アジア太平洋地域で事業拡大、ローカルでのサポート体制充実へ

 2018.05.15−英ドットマティクスは、研究開発におけるインフォマティクスソリューションで急成長中の企業で、創薬研究分野だけでなく、化学や石油・ガス、ファインケミカルなどの新規分野でもユーザーが増加してきている。とくに、今年はアジア太平洋地域での高い伸びを見込んでいるという。ユーザーフォーラムのため来日した同地域担当副社長のビル・バーレー氏(Bill Bailey)と、プロダクトマーケティング担当副社長のロバート・ブラウン氏(Robert D Brown)に戦略を聞いた。

                    ◇       ◇       ◇

 − 最近の業績について教えてください。

 バーレー氏:2017年の売り上げは前年比35%の伸び。新たに86の顧客を獲得した。これにより、グローバルでは39ヵ国に400以上の顧客を持っていることになる。地域別では、米国が全体の50%で、欧州とアジア太平洋を合わせて残りの50%だ。2017年は欧米の伸びが大きかったが、今年からわたしがこの地域専任となり、大きな成長を達成させたい。実際、今年に入って、アジア太平洋市場は昨年の2〜3倍のペースで拡大している。

 − 同地域には拠点もかなり構えていますね。

 バーレー氏:直接の拠点は、日本と韓国、オーストラリアに3ヵ所、ニュージーランドに2ヵ所ある。中国には代理店が2つある。今回のユーザーフォーラム(Dotmatics Symposia 2018)も、ソウル、大阪、東京と回ってきたが、米国のサンフランシスコとボストン(5月)、英国ケンブリッジ(6月)を経て、8月にオーストラリアのブリスベンとメルボルンでフィナーレとなる。

 − 非製薬業のユーザーも増えているそうですが。

 バーレー氏:これは、日本も含めたアジア太平洋地域でも狙っていきたいと考えている。クラリアント社の事例がモデルケースになるだろう。ケアケミカルや合成樹脂など幅広い事業を行っている化学会社で、最終的には世界50サイトとを結んで1,500人規模のユーザーが電子実験ノート(ELN)を利用する計画だ。昨年から導入が始まり、今年から来年にかけてプロジェクトが進んでいく。われわれが良い製品を提供し、顧客が成功してくれれば、そのことがさらに新しい顧客を呼んでくれると思う。

 ブラウン氏:クラリアントは欧州の大手化学会社なので、反響が大きい。紙やエクセルでやっていた研究を、完全に電子化されたELN環境に移行する試みで、ウェブベース、モバイルデバイスの活用、クラウド対応など、普遍的な要件を基盤にしているので、非製薬ユーザーにとってすばらしいモデルケースになるだろう。

 バーレー氏:ドットマティクス製品は単一のソースコードでつくられているので、こうした非製薬業のユーザーの要求で組み込まれた機能が、製薬業のユーザーにもメリットになると思っている。

 − 開発体制も強化していて、この1年間に16人の開発者を21人に増員したとのことです。

 ブラウン氏:ソースコードが1つで、製品ごとの開発ではないため、ユーザー管理やセキュリティなどの共通の機能を製品ごとに開発するような非効率なことがない。それで、少人数でもスピーディーな開発が可能だ。顧客ニーズ優先でアジャイル開発するので、魅力のある機能がどんどん登場することを期待してほしい。

 − ユーザーフォーラムで説明されたロードマップからは、データの解析・可視化の分野がさらに充実しそうですね。

 ブラウン氏:この分野では高機能ツールの「VORTEX」の人気が高いが、これをフルに使いこなす利用者は限られる。そこで、利用者や用途に応じた最適なツールが選べるようにしたい。すでに、データ照会・レポーティングツール「BROWSER」で簡単なデータ解析ができるようにしているが、さらに構造活性相関(SAR)のための専用ツール「SAR Notebook」を新たに開発した。薬化学者がSAR解析をする場合、まず最新のデータを集めてくることがたいへんだし、いつもそうしたソフトを使うわけではないので、使い方が思い出せないこともある。「SAR Notebook」にはナビゲーション機能があり、バックグラウンドでデータが集まってきているので、思い立ったときにすぐにデータ解析やモデル作成を行うことが可能だ。

 − それは便利そうですね。では、最後にあらためてアジア太平洋地域に向けた戦略を聞かせてください。

 バーレー氏:これはドットマティクス全体の哲学だが、もうけ主義じゃないということ。良いものをつくって提供すれば、顧客は付いてくるという考え方だ。顧客とともに成長することが大切で、スタートアップ段階から関与し、顧客の事業が拡大するにつれて利用者数が増えていったというケースが豪州にもいくつかある。それで、小規模なスタートアップ企業もていねいにサポートしたい。とくに、アジア圏は英語オンリーでは難しいので、日本で行っているように現地のサイエンティストを採用するなどして、母国語でサポートすることを重視していく。

 − ありがとうございました。

******

<関連リンク>:

ドットマティクス(トップページ)
https://www.dotmatics.com/

ドットマティクス(日本語トップページ)
https://www.dotmatics.com/ja-jp


ニュースファイルのトップに戻る