富士通と理研がポスト「京」の開発状況発表
CPU試作チップが完成、機能試験を開始
2018.06.22−富士通と理化学研究所は21日、スーパーコンピューター「京」の後継機として共同開発中のポスト「京」について、中核となるCPUの試作チップが完成し、機能試験を開始したと正式に発表した。24日から28日までドイツで開催されるハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)国際会議・展示会「ISC2018」に出展する。CPUの初期動作を確認したことにより、システム開発における重要なマイルストーンを順調にクリアしたこととなる。今後もプロジェクトは、2021年ころのポスト「京」共用開始に向けて進行していく。
ポスト「京」は文部科学省が推進する「フラッグシップ2020プロジェクト」で開発されている時期スーパーコンピューター。富士通が2014年10月から理研と共同で基本設計を開始し、さまざまな分野のアプリケーション開発者と協調設計(コ・デザイン)を実施しつつ、試作・詳細設計を進めている。今回完成したCPU試作チップは、アーム社との協業により、HPCシステムのベクトル処理能力を大幅に拡張するArm v8-Aアーキテクチャーの拡張命令セット(SVE)を策定し、その成果を採用したもの。「京」などで培ったマイクロアーキテクチャーを継承し、高性能積層メモリーと相まったメモリーバンド幅と演算性能を備え、アプリケーションの実行性能が高いレベルで実現できるように最適化される。また、最先端の半導体技術を駆使して、省電力設計および電力制御機能を盛り込むことで高い消費電力当たり性能を実現していく。
ポスト「京」は、Arm v-8AのSVEアーキテクチャーに準拠した世界初のハイエンドCPUを搭載したスパコンになる予定。完成時のCPUの仕様は、1チップに計算ノード48コア+2アシスタントコアと、I/O兼計算ノード48コア+4アシスタントコアが搭載され、Tofuインターコネクトも内蔵される。システム構成としては、1ノード当たり1CPUで、ラック1台に384ノードが装備される予定である。
とくに、従来のシミュレーションで重要となる倍精度演算に加え、人工知能(AI)やディープラーニングなどに有効な半精度演算にも対応可能。また、プログラム開発環境を含むシステムソフトウエアは、「京」と互換性のあるものを富士通が継続して提供する。言語仕様とマイクロアーキテクチャーに継続性があるため、「京」向けのプログラム資産は、リコンパイルすることで確実に移行でき、性能も保証されるという。さらに、理研で開発中のシステムソフトウエアMcKernel、XcalableMP、FDPS(Framework for Developing Particle Simulator)が利用できることも、実行性能・利便性の向上に役立つと期待される。
Armアーキテクチャーには、幅広い開発者やユーザーが参加するコミュニティが存在しており、ポスト「京」ではオープンソースソフトウエア(OSS)を含めたソフト資産が広く利用できることも利点だ。
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