2018年冬CCS特集:富士通九州システムズ

AI応用などで開発を促進、薬物相互作用機能を強化

 2018.12.04−富士通九州システムズ(FJQS)は、自社開発で化合物の薬物動態や毒性を予測するモデリングソフト「ADMEWORKS」、薬物相互作用を予測するシミュレーションソフト「DDI Simulator」などを開発する一方、富士通やモルシスとの提携に基づいて幅広いCCS製品群を提供している。

 開発に関しては、昨年にハンブルグ大学とインシリコによる薬物動態予測モデル作成で共同研究契約を締結。国際的に知名度が高いヨハネス・キルクマイヤー博士を共同研究者として、5種類のCYPに対する基質または阻害を判定するモデル開発を進めている。CYPごとに約1万件のデータを使用し、機械学習のランダムフォレスト法を用いてモデル化を行った。現在、予測精度を向上させるためパラメーターの最適化を図っており、適用領域も広げた上で、今年度内にADMEWORKSで利用できるようにする計画だ。

 また、国内ではAI創薬への取り組みとして、ライフインテリジェンスコンソーシアム(LINC)に参画し、「非臨床データからのヒトADMET予測」プロジェクトを遂行中。動物実験の薬物動態データを学習させることにより、ヒト薬物動態パラメーターを正確に予測することが目的で、化合物構造と実験データを同時に学習させるマルチモーダルディープラーニングに取り組んでいる。富士通独自のディープテンソル技術を利用し、構造式をグラフ化して、グラフ構造を含んだ統一的表現(テンソル表現)に変換し深層学習を行う。自動特徴抽出ができるため、モデルがブラックボックスにならないことが特徴だという。10月のCBI学会で報告したところ、立ち見が出るほどの関心を集めた。まずは、DDI Simulatorの入力データに利用することを目指しているが、最終的には薬物の血中濃度予測をAIで行うところまで研究を進めたいとしている。

 一方、DDI Simulatorは10月に最新のバージョン2.5がリリースされている。消化管における阻害薬/誘導薬の濃度が経時的に変化するモデルを採用することで、実際の体内動態をより良く再現することが可能になった。誘導薬濃度と誘導効果の関係がシグモイド型を示す薬剤についてもシミュレーションできるようになり、適用範囲が広がったことも特徴。文献報告では薬物相互作用が過小評価されている薬物についても、2倍の誤差の範囲内で正しく予測できるようにKiパラメーターが調整されている。


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