2018年冬CCS特集:TSテクノロジー

山口大との連携でAI研究、受託対応の研究員増員へ

 2018.12.04−TSテクノロジーは、山口大学発ベンチャーとして、アカデミックと結びついたノウハウを生かし、計算化学技術をベースに新材料開発や創薬研究を支援。一定期間の専従体制で研究活動をフルにサポートする「包括連携契約」(FTE契約)の評価が高く、研究員の増員も図っている。

 同社は、受託事業が売り上げの6割を占めており、これまでに200件近いプロジェクトを実施してきている。受託研究以外にも、あらかじめ決められたメニューの計算を低料金で迅速に実行する「クイックオーダー」サービスも用意しており、さまざまなレベルの要望に応えることが可能。基本的には、計算化学に関してはあらゆるニーズに応じているが、とくに独自技術としてキネティクス(反応速度論)シミュレーションなどを強みとしている。

 加えて、最近では人工知能(AI)の応用に関する研究にも力を入れている。一例が、山口大学の研究拠点群形成プロジェクト「深層学習の予測に基づいた新規機能性化合物創成と検証」に参画していること。取組中の具体的なテーマは、色素増感太陽電池材料の探索で、深層学習により、分子構造や構造記述子から増感性を予測できるモデル構築を試み、今秋に学会発表を行った。

 今回は、分子構造(原子間のつながり)をグラフ表現に変換し、これを学習データに用いるGCNN(グラフ畳み込みニューラルネットワーク)法を採用。増感性の実測値を有するポルフィリン系色素などのデータセットを用いて、分子の構造的な特徴と増感性との相関を調べた。その結果の考察としては、人間があらかじめ相関性が高そうだと考えた構造記述子は意外に予測への寄与率が低く、機械的に多くの記述子を発生させて客観的に学習させた方が良い結果が得られることがわかったということだ。いずれにしても、分子構造から増感性の予測が可能であることが確認できたため、今回のAIをさらに磨き上げるとともに、有望な物質を合成して実際に検証する段階へと研究を進ませたいとしている。

 今後は、受託研究の「フルオーダー」サービスや「包括連携契約」においても、AI/機械学習関連のテーマに応じることができるようにしていく。とくに、「包括連携契約」は同社のビジネス上でもメインの存在になってきており、引き続き事業体制を強化する。


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