ダッソー・システムズがAI創薬プロジェクトをスタート
BIOVIAブランドでコンソーシアム、メディシナルケミスト向けツール構築
2019.05.31−ダッソー・システムズは、AI(人工知能)創薬に関連したプロジェクトをスタートさせる。BIOVIAブランドの新たな取り組みであり、人間とコンピューターが共同でクリエーティブな設計作業を行う“ジェネレーティブデザイン”の考え方を創薬研究に適用するもの。「ジェネレーティブ・セラピューティック・デザイン」(GTD)の名称で参加企業を集め、コンソーシアム方式でユーザーニーズを反映させつつ、先端のアカデミックグループの知見を取り入れて開発を進める。6月4日からサンディエゴで開催するBIOVIAユーザーコンファレンスの中でキックオフミーティングを行う予定で、当日は日本の製薬企業も何社か参加するという。
GTDは、AI技術を活用することで、より優れた新規化合物を発見し、実験する化合物数を削減し、設計期間の短縮、臨床開発での成功率の向上を達成する目的がある。低分子から中分子、バイオ医薬品領域までをカバーするが、一部の専門家ではなく、一般のメディナルケミストが活用できるツールにすることを目指している。
このため、ユーザーインタフェースはウェブベースで、背後でパイプラインパイロットによるワークフローが稼働し、創薬研究の現場における一連のプロセスを支援する機能性を盛り込む。電子実験ノートとの連携も想定されているようで、外部CROとの連携も含め、デザインした化合物の合成依頼・試験依頼などの自動化も考慮されるもよう。
探索するケミカルスペースは100万〜10億化合物ほどのレンジで、現実的な網羅性はかなり高いと期待される。新奇な構造を発生させるために深層学習を使用する考えで、とくにde novo デザインのための深層学習に適したGenerative adversarial networks(GANs)と呼ばれる手法を採用し、SMILESを利用することによって望ましい特性を持つ化合物を生成。予測ネットワークは望ましい生物学的/化学的性質を計算し、ネットワークが結合してターゲット特性を満たす新しい分子をつくり出す。
例えば、ターゲットに対する活性、オフターゲットへの活性、PKPD、溶解性、吸収、代謝、毒性、特許性、合成可能性、コスト、持続可能性などの複数の指標を評価し、最適化することが可能。分子の新奇性やドラッグライクネス、望ましくない物性を持つかどうかなどのフィルターをかけて絞り込むことができる。また、能動的学習の利用によって現実的な要素を考慮し、実験を行うために必要な反応物が市販化合物かどうか、在庫があるなどの入手容易性、逆合成解析に基づく合成のしやすさ、ラボでの可用性、試薬の入手可能性などを反映させることができるようになっている。
GTDコンソーシアムは3年間の予定で開発を進める方針で、これに加入することにより、AI駆動型の仮想リード最適化、バーチャルとリアルにおける実験の統合、組織内の知識の集約、研究情報システムの効率化といった利益をいち早く手にすることができるという。産業界および学会のリーダーたちとの科学的な議論の場となることや、コンソーシアムへの要望や優先順位への投票権が得られることもメリットになる。
なお、サンディエゴのユーザーフォーラムにおいて、AI駆動型ドラッグデザインのプログラムは5日に組まれており、上海大学のMark Waller教授、ノースカロライナ大学のOlexandr Isayev教授およびAlex Tropsha教授の基調講演が予定されている。
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<関連リンク>:
ダッソー・システムズ(BIOVIAブランドのトップページ)
http://www.3dsbiovia.com/
ダッソー・システムズ(BIOVIAユーザーフォーラムのAI関連プログラムのページ)
https://3dsbiovia.com/events/hosted-events/ugm/2019/gtd.html
ダッソー・システムズ(BIOVIA事業部の日本語ホームページ)
http://accelrys.co.jp/